食事療法
2022.03.04
糖尿病で食べてはいけない果物って?摂取すると良いタイミングや量の目安を解説
- もくじ
糖尿病とは
人の主なエネルギー源は糖ですが、糖尿病は体内で糖を利用する仕組みがうまく働かなくなることで、血液中の糖の量が増えてしまう病気のことです。症状が進むと尿の中に糖が出てくることから、糖尿病という名前がつきました。初期は自覚症状があまりないので気づきにくいのですが、重症化すると糖尿病合併症として失明や手足の切断、人工透析が必要になるなど怖い病気です。
糖尿病の種類と原因
糖尿病には2種類あり、1つは1型糖尿病で糖を利用するときに必要なホルモンのインスリンが分泌されなくなってしまうことで起こり、自分でインスリンの注射が日常的に必要となるものです。
もう1つは、2型糖尿病で普段の食生活で糖を摂り過ぎることなどが原因で、インスリンの効きが悪くなったり、分泌の量が減ったりすることで起こります。糖尿病の90%は2型といわれ、生活習慣病の1種なので食事による予防や改善が可能です。
糖尿病で気をつけるべき栄養素
糖尿病で最も気をつけなくてはいけない栄養素は、糖になります。血糖値は血液中のぶどう糖と呼ばれる糖の濃度を指すため、一番影響が大きいのはぶどう糖です。1型糖尿病は食生活が原因でないため予防することは難しいのですが、2型糖尿病は生活習慣によって予防することも悪化を防ぐこともできるため、食生活を整え、糖の量に気をつけることによって血糖値の値は改善が見込めます。
糖尿病と糖質
そもそも糖質とは、炭水化物のうちエネルギーとして使えるもののことで、体内でエネルギーとして使えないものは食物繊維に分類されます。そのため炭水化物を制限すると、血糖値の上昇を緩やかにしてくれる食物繊維まで制限することになるため、注意が必要です。糖尿病の人は、血糖値の値に直接影響が出るものを1回で摂取し過ぎないように注意しましょう。
果物は血糖値に影響する
糖尿病の人にとって果物を食べてはいけないといわれる理由は、果物が甘いことや野菜と比較したときに糖の量が多いからだといわれています。では実際、果物にはどのような栄養素が含まれ、それらが糖尿病の人の血糖値にどのように影響するのかを解説します。
果物の糖質
果物に含まれる主な糖質はぶどう糖、果糖、しょ糖です。ぶどう糖は糖の中で最も小さい単位であり、脳や各器官の大事なエネルギー源でもあります。また、果糖も同じく最も小さい単位の糖で、果物に多く含まれます。しょ糖は砂糖の成分のことで、ぶどう糖と果糖が1つずつつながった構造を持ちます。糖尿病の人の血糖値には、ぶどう糖以外にしょ糖も大きく影響します。
血糖値との関係
果物に含まれる3つの糖のうち、ぶどう糖は直接血糖値を上昇させます。しょ糖は分解されるとぶどう糖と果糖に分かれるため、半分はぶどう糖と同じように血糖値を上昇させます。果糖は体で吸収されてから一部がぶどう糖になることもありますが、直接血糖値を上げる役割はないため、血糖値への影響は少ないとされています。つまり、果物に含まれる糖質のうち直接血糖値に関わるのはぶどう糖としょ糖の量になります。
中性脂肪との関係
果糖は過剰に摂り過ぎてしまうと中性脂肪へ合成されます。中性脂肪はぶどう糖が足りなくなったときのエネルギー源として利用されるため、予備として体に蓄える目的で作られます。エネルギーとして使われなかった場合、多くは皮下脂肪として蓄えられるため、増え過ぎると肥満の原因となります。その点で果物は摂り過ぎに注意が必要です。
参考文献:南江堂「シンプル生化学 林典夫/廣野治子」
糖尿病との関係
2型糖尿病の原因の1つとして肥満も挙げられます。肥満になることでインスリンの効きが悪くなり、血糖値が下がりにくくなってしまう現象が起こります。果物の過剰摂取が、間接的に糖尿病の悪化につながる恐れもあるため、1日あたりの量に注意が必要です。
果物の食物繊維
果物には食物繊維も豊富に含まれています。食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。果物の水溶性食物繊維はペクチンと呼ばれるジャムを作る際のとろみの部分になり、完熟の果物に多く含まれます。不溶性食物繊維は植物の細胞壁を作っているセルロースやヘミセルロースと呼ばれるもので、ざらざらとした食感の果物に多く含まれます。
血糖値との関係
果物に含まれる食物繊維は、いずれも血糖値の急上昇を抑える働きがあります。水溶性の食物繊維は、粘着質で胃や腸の中をゆっくり移動するため、糖の吸収を緩やかにしてくれます。一方、不溶性食物繊維は噛み応えを与えてくれることにより、よく噛んで食べることにつながるため、食べ過ぎを防ぎ結果として血糖値の急上昇を抑えてくれます。
果物のその他の栄養素
果物には食物繊維以外にも生活習慣病の予防や、健康な体を維持するために効果的な栄養素が豊富に含まれています。どのような栄養素が含まれていて、それぞれどのような働きをするのか紹介します。
ビタミン
果物に多い栄養素として、最初に挙げられるのがビタミンです。中でもビタミンCとAは抗酸化作用が強いことで知られており、動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つとされています。また、濃い色の果物に多く含まれるビタミンAには、粘膜の健康を保つ役割があります。ビタミンCにはコラーゲン合成を助けて血管や皮膚の健康維持、貧血予防、ストレスや風邪への抵抗力を高めるなどの役割があります。
ミネラル
果物から摂取できるミネラルとしてはカリウムが挙げられます。カリウムは多くなり過ぎた塩分の排出を促す役割があります。塩分を多く摂り過ぎがちな現代では、高血圧の予防に効果的です。特に糖尿病の人は同時に別の生活習慣病を発症してしまうことも多いので、意識的に摂りたい栄養素です。果物には野菜と同じくカリウムが豊富に含まれているため、普段の食事でも積極的に取り入れたい食材だといえます。
ポリフェノール
多くの植物に含まれる成分の1つで、何千種類も存在しているといわれています。代表的なものはアントシアニンやカテキンなどがあり、ビタミンCと同じく抗酸化作用が強いため、生活習慣病の予防に役立つと注目されています。糖尿病の人は血糖値が高いことで細胞がダメージを受けることも多いので、積極的に取り入れたい成分です。
糖尿病の人の1日に摂取する果物の目安とおすすめの食べ方
豊富な栄養素を含んでいる果物は、健康面から見ても積極的に取り入れたい食材です。しかし、健康な人であっても食べ過ぎてしまうと、中性脂肪が増えて肥満へつながります。特に糖尿病の人の場合は血糖値に直接関係する糖質が比較的多いので、食べ方を間違えると状態の悪化を招くことになりかねません。そこで、糖尿病の人の1日に摂取する目安を紹介します。
糖尿病の人の摂取量の目安のカロリー
糖尿病の人向けの食事療法として、食品交換表を用いる方法があります。食品交換表とは栄養素ごとに食品を6つに分類し、それぞれのカロリーに基づいて1日に必要な量があらかじめ決められているものです。自分に適した量の食材を選んで献立を立てられるため、バランスよく栄養素が摂れる仕組みです。その中で果物の分類は1日あたり80kcalにするのが目安とされています。
参考文献:文光堂「糖尿病食事療法のための食品交換表 日本糖尿病学会編」
糖尿病の人の注意点
果物の摂取量の目安は80kcalと決まっていますが、何を選んでもいいわけではありません。アボカドは果物の分類ですが、脂質が多いためこの交換表では脂質の多い食品に分類されます。また、品種改良で糖度がかなり高く改良されているものもあるので糖尿病の人は特に注意が必要です。
おすすめな果物の食べ方
果糖は冷やすことでより甘みを強く感じるという特徴があるため、生のままよく冷やして食べるとよいでしょう。できるだけ旬の果物を選んで風味と甘みを最大限に引き出すのがおすすめです。
栄養素の効果的な摂り方
果物に含まれる栄養素にはそれぞれ特徴があります。ビタミンCは熱で壊れやすく、カリウムは水に溶けやすい性質を持ちます。また、ポリフェノールは皮や種の周り、芯の部分に多く含まれます。これらの栄養素を全て効率的に摂取するためには、生のまま水にさらさずに、皮ごと食べられるものはそのまま食べるのがおすすめです。そうすることで満腹感も得られやすく、食べ過ぎも防げます。
食べるタイミング
おすすめなタイミングは食後です。糖尿病の人は空腹時に糖質をいきなり摂取すると、急に血糖値が上がる可能性があるため、朝食や間食として食べるのは少しリスクを伴います。空腹時では食べ過ぎてしまう心配もあるため、食後にデザートとして少量ずつ楽しむのがおすすめです。
注意が必要な果物の加工品
果物の一種であっても糖質が多かったり、栄養素の効果が期待できなかったりするものもあります。一見ヘルシーに思われがちなものも多いので、糖尿病の人は少し注意が必要です。以下で見ていきましょう。
血糖値が急激に上がってしまう恐れがあるもの
ぶどう糖やしょ糖を使って加工されている食品は、ビタミンやミネラルが豊富であっても糖尿病の人には少しリスクが高くなります。血糖値の急上昇を繰り返すとどんどん糖尿病は重くなってしまうので、覚えておくとよいでしょう。
ドライフルーツ
ヘルシーなイメージが強く、健康にも美容にもいいように思われていますが、水分がなくなって濃縮されている分、糖質の量も多くなっています。原材料表示には砂糖と書かれていることもあり、中には砂糖漬けにしてから乾燥させているものもあるため注意が必要です。また、ビタミンCは熱に弱いため、乾燥させる過程で壊れて減ってしまうこともあります。
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ジュース
糖質が添加されているものを避けたほうがいいのはもちろんですが、100%のジュースであっても糖尿病の人は注意が必要です。絞ることで食物繊維が取り除かれ、満足感が得られず摂り過ぎてしまったり、血糖値の急上昇につながったりすることが糖尿病の人には大きな問題となります。
缶詰(シロップ漬け)
加工のタイミングで大量の砂糖とともに加熱されるため、糖質が多いうえにビタミンCは壊れている可能性があります。また、水分中で加工・保存されているため、カリウムも溶けだして減ってしまいます。総合的に考えて糖尿病の人にはおすすめできない食材です。手軽で保存しやすく取り入れやすいですが、果物とは別物と考えたほうがよいでしょう。
糖尿病には食べ方に気をつけて果物を取り入れよう!
今回は果物に含まれている糖質や、それ以外の栄養素の特徴などをお伝えしました。糖尿病の人は制限も多く、慣れない食事療法で大変なこともあると思いますが、食事の中の息抜きや楽しみの1つとして上手に取り入れることをおすすめします。健康的にいいこともたくさんあるので、食べ過ぎにだけ気をつけてぜひ取り入れてみてください。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。