食事療法
2022.07.25
脂質が少ない食べ物とは?制限中の食事の仕方や摂取量を減らす工夫について
- もくじ
脂質制限ダイエットとは?
脂質制限ダイエットとは、脂質の摂取量を通常より減らすダイエット方法です。脂質を減らした分カロリーが減るため、ダイエット効果が期待できます。
脂質の働き
脂質は1gあたり9kcalのエネルギーがあり、体内でエネルギー源として使用されます。使用されなかった分は体脂肪として蓄えられ、体温の維持や内臓を保護する役割があります。また、脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもある成分です。さらに、細胞膜やホルモンの構成物質でもあり、体のさまざまな働きを助けています。
脂質のとりすぎに注意
たんぱく質や炭水化物もエネルギー源となり、1gあたり4kcalのエネルギーを発生します。脂質はこれらに比べて2倍以上のエネルギーを持つため、少しとりすぎただけでもカロリーオーバーになりやすいです。
脂質制限ダイエットの効果
脂質制限ダイエットでは通常より脂質の摂取量を減らすので、摂取カロリーは確実に少なくなります。このため、ダイエット効果が見込まれるのです。
カロリーを減らせば減量できる
脂質・炭水化物・たんぱく質の割合を変え、ダイエットの効果を調べた研究があります。その結果によると、どの栄養素からカロリーをとったかは体重の変化にほとんど影響しなかったと報告されています。体重を減らすには、栄養素の種類に関わらずカロリーを減らすことが大切といえるでしょう。脂質を制限しても、その分食べすぎては意味がないため注意してください。
出典:佐々木敏「佐々木敏の栄養データはこう読む!」女子栄養大学出版部(2015)240-241頁
脂質制限ダイエットのやり方
脂質制限では、具体的にどの程度脂質を減らせばよいのでしょうか。ここでは、脂質制限ダイエットのやり方を解説します。
脂質の摂取量
脂質は、摂取量が多すぎても少なすぎても体に悪影響を及ぼします。脂質制限ダイエットを行う前に、1日にとるべき脂質の量を把握しましょう。
最も健康的な摂取量
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、脂質の摂取量は1日の摂取エネルギーの20~30%とされています。これは1日2,000kcal摂取する場合、脂質44~67gに相当します。
脂質の中でも飽和脂肪酸は、生活習慣病の発症に寄与するためとりすぎに注意が必要です。一方、多価不飽和脂肪酸は体内で合成できないため、十分摂取する必要があります。飽和脂肪酸はとりすぎず、多価不飽和脂肪酸は必要量摂取できるよう、この範囲が設定されています。
脂質制限ダイエットの場合
脂質制限ダイエットの場合、1日の摂取エネルギーの10~20%を目安に脂質の摂取量を制限します。1日2,000kcalとる人であれば、22~44gに相当する量です。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
食べてはいけないものはある?
脂質制限ダイエットで食べてはいけないものはありません。しかし、脂質摂取量に制限があるため、脂質の多い食材や油を使った料理は量に気をつけて食べる必要があります。1人前で20g以上の脂質を含む料理もあるため、注意しましょう。
食事のバランスを保つ
カロリーの減らしすぎは筋肉の分解を引き起こし、代謝が落ち疲れやすくなってしまいます。健康的に美しくダイエットするためには脂質だけに注意するのではなく、バランスのよい食事が必要です。主食・主菜・副菜を揃え、炭水化物やたんぱく質、ビタミン、ミネラルをしっかりとりましょう。
脂質制限ダイエットのメリットとデメリット
たんぱく質や炭水化物ではなく脂質を減らすダイエット方法には、メリットとデメリットの両方があります。自分に合ったダイエット方法を考える参考にしてください。
脂質制限ダイエットのメリット
まず、脂質制限ダイエットのメリットを紹介します。
満腹感を得やすい
脂質は1gあたりのカロリーが高いため、量を少し減らすだけでも大幅なカロリーカットが見込めます。料理に使う油を減らす、低脂肪の食材に変えるなど、食事の量を減らさずにカロリーが減らせるので満腹感のある食事ができます。また、満腹中枢から満腹信号が出るためには、血糖値の上昇が必要です。脂質制限ダイエットでは炭水化物をしっかり摂取できるため、食後に血糖値が上がることで満腹感を得られます。
血中コレステロールを低下させる
肉類や乳製品など動物性の脂質に多く含まれる飽和脂肪酸は、とりすぎると血中のLDL(悪玉)コレステロールを上げてしまいます。動物性の脂質を控えることで血中のコレステロール値を下げ、動脈硬化や心臓病の予防効果が期待できます。
脂質制限ダイエットのデメリット
続いて、脂質制限ダイエットのデメリットを紹介します。
外食やインスタント食品が多い人は実践しにくい
外食やインスタント食品は揚げ物やラーメンなど脂質の多いメニューばかりのため、脂質制限ダイエットには向きません。自炊ができずこういったものに頼りがちな人は、脂質制限ダイエットは実践しにくいでしょう。
肌荒れや便秘を引き起こす可能性がある
脂質の摂取が少ないと脂溶性ビタミンの吸収率が下がり、皮膚の機能を助けているビタミンAが不足しやすくなります。また、脂質は細胞膜の成分でもあるため、不足すると肌荒れを引き起こしやすくなります。さらに、脂質は適度な摂取量であれば、便のすべりをよくして便通を助ける働きもある成分です。脂質を過度に控えるのは避けたほうがよいでしょう。
脂質が少ない食材
脂質制限ダイエットでは、脂質が少ない食材を選ぶことが大切です。ここでは、脂質が少ない食べ物を紹介します。
肉類
肉類は、部位によって脂質量が異なります。脂質が多い部位を避け、脂質が少ない肉類を中心に選びましょう。どうしても脂質が多い部位を食べたい場合は、1日の脂質の摂取量を調整する必要があります。
脂質が多い部位と含有量(100gあたり)
- 和牛リブロース(脂身つき):56.5g
- 和牛ばら肉(脂身つき):50.0g
- 和牛サーロイン:47.5g
- ベーコン(豚ばら):39.1g
- 豚ばら(脂身つき):35.4g
- ウインナーソーセージ(豚):30.6g
脂質が少ない部位と含有量(100gあたり)
- 若鶏ささみ:0.8g
- 若鶏むね(皮なし):1.9g
- 若鶏もも(皮なし):5.0g
- 豚ヒレ:3.3g
- 豚もも(皮下脂肪なし):6.0g
- 輸入牛もも(皮下脂肪なし):6.7g
出典:文部科学省「食品成分データベース」
鶏肉は皮を外そう
鶏肉はむね肉・もも肉とも脂質の少ない食材ですが、皮は多く含みます。脂質制限中は、皮を外して食べましょう。
皮つき・皮なしでの脂質含有量の比較(100gあたり) | ||
食品名 | 皮つきの脂質含有量(g) | 皮なしの脂質含有量(g) |
若鶏むね | 5.9 | 1.9 |
若鶏もも | 14.2 | 5.0 |
出典:文部科学省「食品成分データベース」
魚介類
魚介類も種類によって脂質の含有量が異なりますが、肉類よりは少ない傾向があります。脂質の多い肉類を、魚類に置き換えるのも脂質カットに有効です。
魚介類の脂質含有量(100gあたり)
- たら(まだら):0.2g
- あさり:0.3g
- かつお(春獲り):0.5g
- えび(バナメイえび):0.6g
- まぐろ(びんなが):0.7g
- たこ(まだこ):0.7g
- いか(するめいか):0.8g
- まぐろ(めばち):2.3g
- さけ(しろさけ)4.1g
- あじ(まあじ):4.5g
- かつお(秋獲り):6.2g
- いわし(まいわし):9.2g
- さば(まさば):16.8g
- ぶり:17.6g
- さんま:25.6g
出典:文部科学省「食品成分データベース」
青魚は脂質が多い
あじ、いわし、さば、ぶり、さんまなどの背の青い魚を「青魚」といいます。青魚はほかの魚に比べて脂質が多いため、脂質制限ダイエット中は食べすぎに注意が必要です。
魚の油は必要な脂質
青魚の油には、体内で合成できない多価不飽和脂肪酸が多く含まれます。特に多く含まれるのは、n-3系(オメガ3)といわれるDHA、EPAです。これらは血圧を下げる、LDLコレステロールを減らす、血栓を防ぐなどさまざまな働きを持っています。魚の脂質は避けすぎず、適度に摂取しましょう。
乳製品
乳製品には、動物性の脂質である飽和脂肪酸が含まれます。特に、加工の過程で脂質が多くなる生クリームやチーズは含有量が多いです。脂質制限ダイエット中は、とりすぎないようにしましょう。
乳製品の脂質含有量(100gあたり)
- 無脂肪乳:0.1g
- 乳酸菌飲料:0.1g
- 無脂肪ヨーグルト:0.3g
- 低脂肪乳:1.0g
- 低脂肪ヨーグルト:1.0g
- ヨーグルト:3.0g
- 普通牛乳:3.8g
- 練乳(加糖):8.5g
- プロセスチーズ:26g
- 生クリーム(乳脂肪):43g
出典:文部科学省「食品成分データベース」
低脂肪・無脂肪のものを選ぶ
牛乳やヨーグルトは、低脂肪や無脂肪のものを選ぶと脂質を減らせます。乳製品は、日本人に不足しがちなカルシウムを豊富に含む食べ物です。減らすのではなく、低脂肪や無脂肪に置き換えるのがおすすめです。
野菜
ほとんどの野菜は脂質を含まないか、含んでも100gあたり1g以下と少量です。脂質制限ダイエット中は野菜を積極的に摂取しましょう。ただし油で炒めたりドレッシングをかけたりすると脂質含量が増えてしまうため、野菜の食べ方には注意しましょう。
果物
果物の脂質含有量も、ほとんどが100gあたり1g以下です。ただし、アボカドは17.5gと多く含むため、食べすぎに注意しましょう。
穀類(炭水化物)
穀類に含まれる脂質も少量です。ただし、加工や調理の過程で油脂を加える場合、脂質含量は高くなります。パンの中でもクロワッサンなど、バターを多く使うものは食べすぎないようにしましょう。
穀類を原料とする食品の脂質含有量(100gあたり)
- 白飯:0.3g
- うどん・そうめん・ひやむぎ(ゆで):0.4g
- もち:0.6g
- 玄米(炊飯後):1.0g
- そば(ゆで):1.0g
- 食パン:4.1g
- クロワッサン:20.4g
出典:文部科学省「食品成分データベース」
パンを主食にすると脂質が多くなりやすい
パンの脂質は生地に含まれており、バターやマーガリンを塗ることで摂取量が増えます。さらに、一緒に食べるものも脂質の多い料理になりがちです。脂質制限ダイエット中はパンの種類だけでなく、一緒に食べる料理も脂質が少なくなるよう注意しましょう。
調味料
調味料の中にも、油脂を多く使ったものがあります。脂質の少ないものやノンオイルのものを選ぶことで、脂質がカットできます。脂質を減らすとコクが少なくなりやすいため、だしをしっかりとる、香辛料や酸味のある調味料を活用するなど工夫しましょう。
脂質の多い調味料と含有量(100gあたり)
- ラー油:99.8g
- マヨネーズ(全卵型):76.0g
- マヨネーズ(卵黄型)74.7g
- フレンチドレッシング:41.9g
- サウザンアイランドドレッシング:41.4g
- ごまドレッシング:26.3g
- 和風ドレッシング:14.5g
出典:文部科学省「食品成分データベース」
卵は食べても大丈夫?
卵100gには脂質が10.4g含まれます。卵1個は約50gなので、脂質5g程度となります。脂質制限ダイエット中に食べてはいけないものではありませんが、食べすぎは避けましょう。
脂質を減らす調理の方法
脂質制限ダイエットでは食材の選び方だけでなく、調理方法も工夫する必要があります。ここでは、脂質を減らすための調理方法を紹介します。
揚げ物・炒め物は極力避ける
揚げ物や炒め物は油を多く使うため、脂質制限ダイエット中は控えましょう。特に衣をつけて揚げるフライや天ぷらは、油を多く吸収します。食べてはいけないものではありませんが、少量にして脂質の摂取制限を超えないよう調整が必要です。食べる量が少ないと満足感が得られず、ダイエットの継続が難しくなるため、極力食べないようにしたほうがよいでしょう。
油の種類でカロリーは変わらない
さまざまな種類の油について、健康やダイエットによいといわれていますが、どの油も1gあたり9kcalであることは変わりません。体脂肪になりにくい油もありますが、とりすぎるとカロリーオーバーにつながるため注意しましょう。
ゆで・焼き・蒸し料理を選ぶ
脂質制限ダイエット中は、油を使わないゆで・焼き・蒸し料理を中心とした食事をしましょう。これらの調理方法では食材中の脂質が流れ出るため、脂質カットの効果があります。炒め物のレシピも、フッ素加工されたフライパンを使えば油を使わずに作れます。
簡単に糖質をカット!ジョイントの「糖質制限食」
自分で作るのはなかなか・・という方にお勧めしたいのが、株式会社ジョイントの「糖質制限食」です。調理方法は冷凍されたお弁当を食べる直前にレンジであたためるだけ!
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脂質を適度にとり健康的にダイエットしよう!
脂質は炭水化物やたんぱく質の2倍以上のカロリーを持つので、制限することで効率よくダイエットができます。一方で、脂質は大切な役割を持つ栄養素でもあるので、減らしすぎは体によくありません。バランスのよい食事の中で適度に脂質をとり、健康的なダイエットを心がけましょう。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。