健康情報
2022.06.09
疲れに効く食べ物とは?体の調子を整える栄養素を摂って疲労回復しよう!
どうして疲れるの?疲れのメカニズム
疲労とは肉体的や精神的に過度の負荷がかかった状態や、疾病などにより活動能力の低下した状態のことです。注意力の低下、動きが鈍くなる、行動量の低下、頭痛、腰痛、肩こり、思考力の低下などが見られます。
疲れの原因
疲れの原因は、身体の中で起こる糖化や酸化によるものだと考えられています。では、糖化や酸化はどうして起こるのか、その原因と機序について解説します。
糖質の摂りすぎ
糖質を摂取すると、脳内のドーパミンという物質が低下します。ドーパミンは意欲の向上や運動・学習能力の向上、幸福感を得られる物質です。少なくなるとこれらの作用も低下してしまい、脳も疲れたと認識します。また、糖質を摂りすぎると余分な糖質がタンパク質と結合して糖化(メイラード反応)が起き、AGEsという物質が生成されます。この物質が蓄積されることで老化現象が引き起こされ、疲労の原因となるのです。
過度の糖質制限
過度な糖質制限も疲労の原因となります。過度に制限するとエネルギー不足となり、慢性的に疲れがとれにくくなるのです。また、脳は糖質しかエネルギー源とならないため、制限をすると代わりにタンパク質や脂質が糖に変換されます。そのため、間違った糖質制限をすると筋肉に蓄積されているタンパク質が分解され、筋肉量が低下するのです。筋力の低下は、疲れやすい身体になります。
筋肉疲労
激しい運動を行うと消費される酸素の量が多くなり、活性酸素と呼ばれる物質が発生します。この活性酸素は、身体の動きをサビつかせる働き(酸化)があることが特徴です。一方で、活性酸素が発生すると、体内では抗酸化酵素が作用して活性酸素を体外へ排出する働きが強くなります。しかし、活性酸素の量が抗酸化酵素よりも多く発生すると、筋肉細胞や自律神経細胞が攻撃を受け、疲労の原因となります。
夏の暑さに注意
猛暑が続くと、外気と室内との気温差により、自律神経に疲れが出てしまいます。また、紫外線により交感神経が刺激され、1日中神経が興奮状態のまま休まらないため、自律神経がぐったりするのです。
【栄養素別】疲れに効く食材
疲れには、どのような栄養素や食べ物が効くのでしょうか。ここでは、疲れに効く食べ物を栄養素別に紹介します。
クエン酸
クエン酸は体内のエネルギーを生産する際に使われる物質です。糖質やタンパク質、脂質は分解されるとクエン酸回路と呼ばれる代謝回路によってエネルギーを作り出します。つまり、クエン酸を摂取することでエネルギー産生の効率があがった結果、疲れに効きやすくなるのです。さらに、疲労物質の1つである乳酸を分解する働きもあります。
クエン酸を多く含む食べ物
クエン酸は柑橘類や梅干などすっぱい食べ物に多く含まれる成分であり、以下の食べ物に特に多く含まれています。
クエン酸(100gあたり) | |
レモン | 6.5g |
梅干し(塩漬け) | 3.4g |
グレープフルーツ | 1.1g |
キウイフルーツ | 1.0g |
オレンジ | 0.8g |
パイナップル | 0.6g |
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビタミンB群
ビタミンB群には、エネルギー代謝を促進させる働きがあります。そのなかでもビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6は特に意識して摂取して欲しいビタミンです。
ビタミンB1
体内で糖質からエネルギーを作る際に、補酵素として働くビタミンです。ビタミンB1が不足すると乳酸が溜まりやすくなるため、疲れが取れにくくなったり食欲が減退したりします。
ビタミンB1を多く含む食べ物
ビタミンB1を多く含む食べ物は、以下のとおりです。夏バテなど、疲れに効く食材としては有名なうなぎや豚肉をはじめ、小麦やらっかせいにも豊富に含まれています。
ビタミンB1含有量(100gあたり) | |
小麦/小麦はいが | 1.82mg |
豚/もも赤肉/生 | 0.96mg |
らっかせい/乾 | 0.85mg |
うなぎ/かば焼き | 0.75mg |
豚/肩ロース/生 | 0.63mg |
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビタミンB2
体内で脂質からエネルギーを作り出す際に、補酵素として働くビタミンです。また、酸素を全身へ運ぶためのヘモグロビンや赤血球の生成にも必要です。これらの血球が不足すると細胞への酸素供給が行き届かなくなり、疲れが出る原因となります。また、粘膜や皮膚を保護する作用もあります。
ビタミンB2を多く含む食べ物
ビタミンB2は鶏や豚の肝臓などに多く含まれているほか、以下の食べ物にも多く含まれています。
ビタミンB2含有量(100gあたり) | |
豚/肝臓/生 | 3.6mg |
牛/肝臓/生 | 3.0mg |
鶏/肝臓/生 | 1.8mg |
豚/レバーぺースト | 1.45mg |
いわのり/素干し | 2.07mg |
あおのり/素干し | 1.66mg |
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビタミンB6
タンパク質をアミノ酸に分解して代謝する際の補酵素になります。また、脳の神経伝達物質の合成を活発にさせる働きがあるため、不足すると脳の神経伝達が不調となり、疲れを感じやすくなります。
ビタミンB6を多く含む食べ物
ビタミンB6を多く含む食べ物は、以下の通りです。まぐろの赤身やバナナなど、生食できるものにも多く含まれているため、手軽に摂取しやすいのが特徴です。
ビタミンB6含有量(100gあたり) | |
みなみまぐろ/生 | 1.08mg |
びんながまぐろ/生 | 0.94mg |
めばちまぐろ/生 | 0.76mg |
きはだまぐろ/生 | 0.64mg |
まかじき/生 | 0.44mg |
くろかじき/生 | 0.44mg |
めかじき/生 | 0.37mg |
玄米 | 0.45mg |
バナナ/生 | 0.38mg |
出典:文部科学省「食品成分データベース」
イミダゾールジペプチド
イミダゾールジペプチドが持っている強い抗酸化作用は、疲れによる身体能力の低下に有効であることが研究により証明されました。イミダゾールジペプチドとは、カルノシンとアンセリンなどの成分の総称であり、これらの成分はヒトの骨や脳にも含まれています。
イミダゾールジペプチドを多く含む食べ物
イミダゾールジペプチドは現在研究が進んでいる栄養素の1つであり、食品成分表への記載はまだありません。しかし、鶏むね肉に多く含まれていることが、研究で明らかになっています。また、熱に強い成分のため、加熱調理後でも栄養を損なうことなく摂取できます。
参考:薬理と治療「イミダゾールジペプチド配合飲料の日常的な作業のなかで疲労を自覚している健常者に対する継続摂取による有用性」
βカロテン(ビタミンA)
強い抗酸化作用をもっており、皮膚や粘膜の新陳代謝を促進させる作用があります。この作用によって免疫力が高まるため、疲れにも効果を発揮します。
βカロテンを多く含む食べ物
βカロテンを多く含む食べ物は、以下のとおりです。小松菜や人参、トマトなどの緑黄色野菜に多く含まれる脂溶性ビタミンの1つで、油と一緒に摂取することで吸収率がアップします。
βカロテン当量含有量(100gあたり)※(ビタミンA効力) | |
春菊 | 4500μg ※(380μg) |
ほうれん草 | 4200μg ※(350μg) |
小松菜 | 3100μg ※(260μg) |
チンゲン菜 | 2000μg ※(170μg) |
にんじん(根) | 8600μg ※(720μg) |
ブロッコリー | 810μg ※(67μg) |
すいか | 830μg ※(69μg |
日本かぼちゃ | 730μg ※(60μg |
トマト | 540μg※(45μg) |
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビタミンC
体内で赤血球を作り出す際の補酵素としての役割があります。さらに、鉄分の吸収率を上げる働きがあるため、貧血や疲れに効く栄養素の1つです。
ビタミンCを多く含む食べ物
ビタミンCを多く含む食べ物は、以下の通りです。ビタミンCはグレープフルーツやいちごなどの果物に多く含まれるだけでなく、ほうれん草などの野菜にも多く含まれています。
ビタミンC含有量(100gあたり) | |
ブロッコリー | 140mg |
レモン(全果) | 100mg ※果汁50mg |
いちご | 62mg |
オレンジ | 60mg |
ピーマン | 76mg |
小松菜 | 39mg |
グレープフルーツ | 36mg |
ほうれん草 | 35mg |
出典:文部科学省「食品成分データベース」
即効性のある食べ物は?
これを食べると疲れにすぐに効くという、即効性がある食べ物は残念ながらありません。しかし、上記の栄養素を含む食材を食事から積極的に取り入れることで、疲れにくい身体を作れます。長時間の仕事や勉強などの合間には、間食として脳のエネルギー源となる糖質を摂取するのがおすすめです。また、運動後に糖質やタンパク質を補給することで代謝がアップし、疲労回復には効果的です。
疲れに効く栄養素を効率よく摂取する方法
ここでは疲れに効く栄養素を効率よく摂取できる調理方法や、コンビニで手軽に購入できる疲労回復メニューを紹介します。
調理方法
疲れに効く栄養素を、余すことなく摂取するためのおすすめの調理方法を紹介します。
スムージーにして栄養素を丸ごと摂取する
果物に多く含まれるビタミンCは熱に弱い栄養素なので、生のままスムージーにすることで効率よく栄養素を摂取できます。夏バテで食欲が低下しているときにもおすすめです。
スープや鍋にして、汁に流れ出た栄養素も摂取する
ビタミンB群などの水溶性ビタミンは水に溶けやすい栄養素であるため、流れ出た栄養素を丸ごと摂取できるメニューがおすすめです。
コンビニで買える疲れに効くおすすめメニュー
コンビニで手軽に手に入るものも、疲れに効くメニューはいろいろあります。ここでは、コンビニで購入できる疲労回復メニューを紹介します。
栄養ドリンク
疲れのタイプ別に種類が選べるため、自分の摂取したい栄養素を手軽に効率よく摂取できます。しかし、栄養ドリンクには糖質も多く含まれているため、飲みすぎるとカロリー過多になる場合があります。食事から栄養を摂取するのが理想であるため、どうしても疲れが取れないときや即効性を求めるときなど、限定的に飲みましょう。
フルーツ
コンビニには、生のフルーツや冷凍フルーツも多く売られています。フルーツにはビタミンCが多く含まれているため、仕事や勉強の合間のおやつや食後のデザートに最適です。
梅おにぎり
エネルギー源となる炭水化物とクエン酸を多く含む梅干しを一緒に摂れるので、疲れに効率よく効く食べ物です。
冷凍のお弁当で手軽に栄養を摂る
ジョイントのお弁当は管理栄養士監修の栄養バランスが整ったお弁当。
副菜にたっぷりと野菜を使っている点や、電子レンジで温めるだけで簡単に栄養を摂取でき、料理を作れない忙しい日にも大助かりな点が魅力。
十分な休息をとる
疲れた脳や身体を回復するには、休息も重要です。質のよい睡眠は疲労回復にも効果的なので、栄養だけでなく十分な休息も確保しましょう。
疲れに効く食事をとり、疲れに負けない健康的な身体を手に入れよう!
疲れが蓄積すると、だるさや食欲低下などの身体的不調だけでなく、仕事や運動効率も低下してしまいます。疲れに即効性のある食べ物はありませんが、疲れに効く食材を食事から積極的に取り入れて、疲れに負けない健康的な身体づくりをしましょう。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。