健康情報
2022.05.13
高齢者が食欲不振になる理由は?原因や予防対策、回復させる工夫を説明
食欲不振になるとどうなる?
食欲不振とはそもそもどのような症状なのでしょうか。高齢者の食欲不振で注意すべき点を紹介します。
食欲不振とはどんな症状?
食欲不振とは食べていないにも関わらず、以下のような症状が現れることをいいます。
- お腹がすかない
- 食事をする気になれない
- 食べる物が偏る
食欲不振が単独で発症することはまれで、腹痛や発熱、胸部痛、動機、息切れなど、ほかの症状に随伴してみられることが多いです。内臓疾患の病態からの発症もあれば、抑うつ状態や不安神経症など心理的要因からの発症も多くみられます。
高齢者が食欲不振になったときの注意点
低栄養状態
高齢者が食欲不振を起こすと身体に必要な栄養素やエネルギーが不足してしまい、低栄養状態になる可能性があります。低栄養状態による身体への影響は以下の通りです。
- 免疫力が下がり、風邪をひきやすくなる
- 骨密度が低下し、骨がもろくなる
- 皮膚が炎症を起こす
高齢者は食欲不振から低栄養状態になることで体力が低下し、急に寝たきり状態になってしまうことも懸念されます。
水分不足による脱水
人は飲み物からだけでなく、食事からも水分を摂取しています。食欲不振になると食事からの水分がとれなくなるので、脱水症状を起こす可能性があるのです。
低血糖
食欲不振を起こすと、低血糖にも注意が必要です。低血糖状態になるとめまいや吐き気、集中力の低下などを起こします。
糖尿病の方で、特に高齢者は糖尿病治療薬やインスリンで血糖のコントロールをしている人が多いです。そのような人が食欲不振になり血糖コントロールをそのまま継続すると、低血糖のリスクが高くなります。
糖尿病の持病がある高齢者が食欲不振になったら、服薬状況の確認を行いましょう。糖尿病治療薬の服用があった場合はかかりつけ医に相談し、服薬を継続するかの判断をしてもらうとよいです。
高齢者が食欲不振になる理由や原因
高齢者は食欲不振を起こしやすく、原因も多数考えられます。また、1つの理由に限らず複数の要因が重なって発症していることもあるのです。そこで、考えられる要因を紹介します。
加齢による身体的要因
内臓機能の低下
加齢により内臓機能が低下することで、胃腸の消化吸収能力が落ちてしまいます。それにより消化不良や下痢、便秘などになりやすく、食欲不振の原因になるのです。
食欲不振の原因が食道にある場合、胃や食道に潰瘍を起こしている可能性があります。食道の働きが悪くなると食べ物が逆流し、食道炎や胃潰瘍を起こすため、さらに消化機能が低下するのです。
また、胃の機能が低下すると少量を食べただけでも胃が苦しくなり、満腹に感じることがあります。
味覚、視覚、嗅覚を感じにくくなる
加齢により、味覚を感じる細胞は減少します。味覚が鈍感になるため、味が濃いものを好んで食べるようになるのです。血圧が高い人には塩分控えめで食事を提供しますが、味覚が低下した高齢者には味がないように感じてしまいます。それが食欲不振の原因にもなりえるのです。
また、嗅覚が低下すると食事の匂いを感じられないため、食欲がそそられません。ほかにも視覚の低下で食べ物の色が判別できなかったり、そもそも食事が見えなかったりすることがあるのです。目で見て認識することが難しいと、食欲が湧かないことがあります。
筋力や基礎代謝の低下
高齢者は加齢による筋肉量の低下や基礎代謝の低下により、空腹を感じにくくなります。
また、高齢者が1度風邪をひくと回復するのに時間がかかります。食欲が落ちているとさらに体力が落ちてしまうので、できる限り早く回復を促すことが必要です。
病気
身体面・精神面ともにストレスを感じると、食欲低下を起こす大きな原因になります。風邪や消化器官の病気(胃炎・胃潰瘍・肝臓病など)、がん、心不全などさまざまな病気が食欲低下の原因となります。
また、後期高齢者に多い認知症は目で見て食べ物と認識できなかったり、箸の使い方が分からなかったりするのです。食べる行為を忘れてしまうため、食欲不振の原因となります。
口腔機能の不具合
食欲が落ちる理由は、口腔機能や嚥下状態に障害がある可能性もあります。義歯の不具合で咀嚼が上手くいかず、食べる意欲が落ちていることもあるのです。また、飲み込みが上手くいかず食べ物でむせてしまい、食事に対して恐怖感を抱くこともあります。
精神的要因
うつ病や精神的に病んでいるときは、食欲不振になりやすいです。特に高齢者は以下の理由でストレスを感じることが多く、食欲不振を招きやすいのです。
- 身の回りの人の死別
- 孤独感
- 生きがいがなくなる
- 今まで住んでいた家から病院や介護施設への移住
- 身体が不自由になる
- 経済的不安
環境や生活習慣
高齢者は長年住み慣れた場所から子どもと同居を始めたり、介護施設へ入所したりすることがあります。そのような環境の変化がストレスになり、食欲が落ちることがあります。
また、不規則な生活習慣や睡眠不足、運動不足によって自律神経が乱れ、食欲減退に繋がることもあるのです。
高齢者の食欲不振に対する予防・対策
高齢者の食欲不振を軽視すると、大変な事態をひき起こす可能性があります。まずは予防や対策が大切です。
食欲不振を予防する方法
食事の時間を決め、生活習慣を整える
生活習慣の乱れは食欲不振の原因になります。朝・昼・晩の食事時間を決めることで、生活習慣を整えましょう。
正しい姿勢で食事する
正しい姿勢は、食事の飲み込みがスムーズになることに繋がり、姿勢が悪いとむせるなど嚥下に影響が出ます。高齢者が嚥下障害を起こすと食事に対して恐怖感を抱いてしまい、食欲不振に繋がるため注意しましょう。
食欲不振にならない対策法
食事を認識してもらう
高齢者のなかには認知症で食事が認識できない人や、白内障で目が見えにくい人がいます。そのような人でも食欲が湧くよう、食事を認識してもらえるよう声掛けを行いましょう。
食べやすいものを選ぶ
義歯の不具合や嚥下障害などが影響して食欲不振になっている高齢者には、食べやすい食事を提供するのがポイントです。
柔らかいものや食べやすい大きさ(ひと口で食べられる大きさ)にして提供しましょう。
食事を楽しむ工夫を組み込む
季節感のある料理を提供したり、見た目を凝ったものにしたり、家族を集めて食事会をしたりといった工夫で、食事を楽しめるようにしましょう。
高齢者にとってはそれが刺激になり、食事が楽しい時間になります。食事を楽しむことで高齢者が食欲を維持できるようにしましょう。
好きな料理や食材を入れる
提供された料理が全て嫌いなものだと、どんな人でも食べる意欲は落ちてしまいます。それは高齢者も同じです。そこで好きな料理や食材を1品入れてみましょう。「食べたい」と思えるよう働きかけ、食事を楽しめるようにすることが大切です。
食べたいときに食べられるようにする
- 生活習慣を整えることも大切ですが、食べたいときに食べられるようにしておくのもポイントです。冷凍食品やレトルト食品を準備しておきましょう。
高齢者を食欲不振から回復させる工夫5選!
高齢者に食欲を取り戻してもらいたいとき、回復を手助けする工夫を紹介します。
①少量を盛り付ける
食欲が落ちた高齢者にとって、目の前に定食が並ぶと食べなくてはいけない義務感で負担を感じることがあります。そのため、食べられる量を少しずつ提供し、食べたら追加することで負担を軽減できるのです。
②手でつかめるメニューを1品いれる
高齢者がうつ病になると、箸で食べることすら億劫に感じることがあります。その対策として、手でつかめる食べやすいメニューを加えるのがポイントです。おにぎりやサンドイッチ、唐揚げなど手でそのまま口へ運べると食事しやすく感じられます。
③環境を変えてみる
食事をする環境を変えてみるのも1つの手です。外食をしたり、食事中に音楽をかけてみたり、ランチョンマットを変えてみたりと楽しい雰囲気の食事処に変えると、食欲が増す可能性があります。
④食べられそうなものを準備しておく
食欲がないときは、冷たくて喉越しのよいものが好まれます。プリンやヨーグルト、アイスクリームなどを準備しておきましょう。また、うどんやお茶漬け、雑炊、茶わん蒸し、柑橘系の果物なども食べやすいです。甘いものを嫌う高齢者もいるので、本人の好みに合わせて準備をしておきましょう。
⑤水分で栄養を補給する
食欲はなくても、水分は摂取できる場合があります。そのような高齢者は水分を含む飲料(牛乳、果汁など)から栄養を補給し、栄養状態を維持できるようにしましょう。
食欲増進で心も身体も元気を取り戻そう!
高齢者は食が細くなりやすいですが、それを放置すると食欲不振に拍車をかけることになりかねません。まずは、食欲不振にならないために予防しましょう。
食欲不振になった場合は、早く改善できるよう工夫してみてください。少しでも食べられるようになると、そこから食欲が増す可能性があります。たくさん食べることで、心も身体も元気に過ごしましょう。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。