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2022.04.25
リンが多い・少ない食べ物とは?摂りすぎないための料理のひと手間を教えます
リンとは
リンは元素記号「P」で表される、非金属のミネラルです。全ての生物に含まれ、人間の体内ではカルシウムの次に多く存在します。無味無臭・透明なので目視できませんが、体重の1%の重量があり、そのほとんどは「リン酸塩」として骨や歯に使われます。細胞内では、エネルギー代謝や脂質代謝にも関わる重要な役割も担っているのです。
リンの摂取基準量と実際の摂取量
リンの摂取基準量
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、リンの食事摂取基準量は成人男性で1日1000mg、成人女性で800mgとなっています。18歳から高齢者まで、摂取基準は変わりません。健康に影響を与えない範囲の耐容上限量は、1日に3000mgまでです。
実際の摂取量
2019年の「国民健康・栄養調査」では、リンの摂取量は成人男性で1079mg、成人女性で942mgです。この摂取量には加工食品に添加されているリンの量は加算されておらず、実際にはもっと多く摂取していると考えられます。このことから私たちは、1日の摂取基準量を超えたリンを摂取していることがわかります。
リンの種類と特徴
有機リン
リンは、全ての生物に含まれている必須のミネラルです。有機リンは、人が食べ物としている植物や動物に自然と含まれているリンのことを指します。リンはたんぱく質と結合しているため、たんぱく質が多く含まれる肉類や魚介類、豆類に多く含まれているのです。
無機リン
加工食品に添加物として含まれているのが、無機リンです。ハムやソーセージなどの加工肉には水分保持や結着材、発色剤、保存料などとして使用され、柔らかく見た目も鮮やかで美味しい食感を保つ働きをします。中華麺のかんすいや清涼飲料水にも無機リンが使用され、清涼飲料水の中ではコーラに最も多く使用されています。
吸収率の違い
種類の違う有機リンと無機リンですが、大きな違いは吸収率にあります。それぞれの吸収率は以下のとおりです。
植物性 | 動物性 | |
有機リン | 20〜40% | 40〜60% |
無機リン | 90%以上 | 90%以上 |
自然素材に含まれる有機リンの吸収率は20〜60%なのに対し、添加物の無機リンは90%以上が体内に吸収されるのです。無機リンは加工食品に多く含まれるので、加工食品を食べすぎないことでリンの摂りすぎが防げます。
リンが不足したときの身体への影響
リンは多くの食品に含まれているので、一般的な食事で不足することは考えにくいです。しかし、消化器官の疾患などでリンの吸収が妨げられると不足することもあります。リンは体内で重要な役割を果たしており、不足した場合は衰弱や食欲不振、けん怠感などの症状が現れます。
リンを摂りすぎたときの身体への影響
リンとカルシウムは、血中では1:1〜2の比率でバランスをとっています。リンを摂りすぎると、骨に蓄えている貯蔵カルシウムを血中に放出しバランスを保とうとします。そのため、骨のカルシウムが減少し骨粗鬆症の原因となるのです。
また、リンの摂りすぎで尿中にリンを排出しきれなくなると、血中のリン濃度が高まるので高リン血症が起こります。高リン血症は、血管の石灰化や心不全、心筋梗塞にも至る症状で、最も注意が必要です。
リンの含有量
普段口にする食べ物の全てにリンが含まれています。リンを摂りすぎないようにするには、どうすればよいのでしょうか。リンを多く含むもの、少ないものを見ていきましょう。
リンが多い食べ物
リンが多い食べ物は以下のとおりです。
- 肉類
- 魚介類
- 卵黄
- 大豆など
特に丸ごと食べられる小魚や、魚卵に多く含まれています。また、加工食品のハム・ソーセージ類、水産練製品、干物、インスタント麺などには、吸収率の高い無機リンが添加物として使用されています。スナック菓子や清涼飲料水にも無機リンが含まれるため、食べすぎ、飲みすぎには注意が必要です。
リンが少ない食べ物
リンが少ない食べ物は以下のとおりです。
- 野菜
- 芋類
- きのこ類
- 海藻類など
たんぱく質の少ない食品は、リンの含有量も低くなっています。肉や魚など高たんぱくな食べ物を調理する場合は、比較的リンの含有量が少ない脂身を使うとリンの摂取量が抑えられます。
リンの吸収を妨げる成分とは
透析患者が吸着剤として服用している薬剤は、炭酸カルシウム、セベラマー塩酸塩、炭酸ランタン、ビキサロマー、クエン酸第二鉄の5種類が承認されています。それらの成分は、血中でリンを吸着して尿に排出させる働きがあります。また、胃薬に含まれる水酸化アルミニウムはリンの吸収を妨げる性質があるため、胃薬を長期的に服用している場合、必要な量のリンが吸収できず体内のリンが不足することもあるのです。
参考:日本薬理学雑誌 2014年144巻6号
リンを摂りすぎないための料理のひと手間
普段の食事内容を大きく変えなくとも、調理の前のひと手間でリンの摂りすぎを防げます。食材を水にさらしたり下茹でしたりすることで、リンは水や湯に流れていくのです。さらした水や茹でた際の湯には、リンが溶け出しているので捨てましょう。ここからは、各食品のリンを減らすためのポイントを紹介します。
肉・魚類
たんぱく質の多い肉・魚類はリンの含有量も多いので、調理の前にひと手間を加えたい食材です。薄切り肉を使うなど表面積を大きくすることでリンが溶け出しやすくなります。種類により差がありますが、茹でることで肉類では31〜50%、魚類では水煮により4〜39%のリンが除去される結果が出ています。
参考:特定非営利活動法人 日本栄養改善学会「五訂成分表収載食品の調理による成分変化率表2003」
加工肉
加工肉に含まれるリンは、無機リンの添加物です。添加物は、全体的に水に溶け出しやすい性質があります。ハムやウインナーは、調理の前にサッと下茹でするのがおすすめです。腸詰めウインナーはリンが流れ出るように、皮を切って茹でるとよいでしょう。
水産練製品
ちくわやかまぼこなどの水産練製品にも、添加物としての無機リンが含まれています。調理の前に、下茹でのひと手間を加えましょう。茹で汁はリンが溶け出ているので捨ててください。
インスタント麺
中華麺やインスタントラーメンの独特の食感は「かんすい」によるものですが、かんすいの中にも無機リンが含まれています。麺の茹で汁は捨てて、別の湯でスープを作りましょう。
乳製品
プロセスチーズには100g中730mg、牛乳の約7倍のリンが含まれています。ただし、牛乳のタンパク質、カルシウムと同じ成分のチーズは20gです。リンは約1.6倍になります。また、乳製品にはほかにも大切な役割を果たす栄養素が含まれているので、毎日の食事には取り入れたいものです。クリームチーズなどリンの少ないチーズに置き換えることで、リンの摂取量を抑えましょう。
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(2020年版)」
リンの摂りすぎに注意して健康な身体を手に入れよう
さまざまな食品に含まれるリンを摂りすぎないためには、日常の食生活でのほんのひと手間が大切です。健康な身体であればリンは最終的には尿と一緒に排出されますが、腎疾患のある人や透析患者にとっては摂取を避けたい成分です。また、便秘により便の中に含まれるリンが体内に再吸収される恐れもあります。リンの摂りすぎと共に、便秘にも注意しましょう。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。