食事療法
2022.04.22
マグネシウムは糖尿病に効果的って本当?気になる関係性を徹底解説!多く含む食品も紹介
糖尿病とは
糖尿病とは、体に取り入れた糖をうまくエネルギーに変えられず、血液中に糖が増えてしまう病気です。病状が進むと尿中に糖が出るため、糖尿病と呼ばれます。初期は自覚症状がほとんどありませんが、重症化すると失明したり手足の壊死が起こったり、人工透析が必要になったりと深刻な糖尿病合併症が起こります。
糖尿病の種類
糖尿病はその原因によって1型糖尿病、2型糖尿病に分けられます。ほかにも妊娠中に血糖のコントロールがうまくいかなくなる妊娠糖尿病、遺伝子異常などによるその他の糖尿病もあります。
1型糖尿病
子どもや若年層に発症する糖尿病です。すい臓の機能に異常があり、血糖をコントロールするホルモンであるインスリン製剤が作られないため高血糖が起きます。1型糖尿病の場合は、日常的にインスリンを体内に取り入れる必要があります。
2型糖尿病
中高年層に多く見られ、全体の9割近くを占める糖尿病です。主な原因は体質(遺伝)や食生活・運動不足などの生活習慣の乱れによるもので、代表的な生活習慣病の1つです。糖の摂取量が多すぎることや、慢性的に糖が体内に多すぎる状態が続くことでインスリンが働きにくくなり、高血糖が続きます。今回は主に2型糖尿病に注目してお話しします。
糖尿病を改善するためには
糖尿病の進行具合に合わせて治療を進めることが大切ですが、初期の段階では生活習慣を見直すことによって改善が可能です。また、重症化している場合でも薬に頼るだけでなく、同時に毎日の生活習慣を見直すことが必要となります。
食事療法
重症になるほど、1日あたりの糖質の摂取量を厳しく管理しなければなりません。肥満も糖尿病の改善の妨げになるため、同時に改善する必要があります。初期の段階で早めに食生活を改善すると、負担も少なく済みます。
運動療法
運動をすることでエネルギー消費ができるため、過剰摂取してしまった糖を減らすのに効果的です。日常的に運動を取り入れるとインスリンが働きやすくなる効果が期待でき、肥満の改善にもつながるため糖尿病の治療のなかでも欠かせません。
薬物療法
薬物療法に関しては、ある程度糖尿病が進行してしまった人が取り入れます。食事の改善や運動を取り入れることは効果が出るのに時間がかかるため、日常的に危険なレベルで血糖値が高くなる場合には薬を併用する必要があります。
マグネシウムとは
マグネシウムは多量ミネラルのうちの1つで、成人の体内に約25g含まれており、カルシウムと密接な関係性を持つことが知られています。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
マグネシウムの栄養素としての働き
マグネシウムの主な働きは、骨の形成です。また、体内では酵素が働いて常にさまざまな反応が起こっていますが、マグネシウムはこの酵素の働きを助けています。
骨の形成
マグネシウムの主な働きの1つが、カルシウムやリンとともに骨や歯を形成することです。 体内に含まれるマグネシウムのうち50〜60%は骨に含まれており、体内で足りなくなった際に骨から供給できるように蓄えられています。
神経伝達
マグネシウムは細胞のなかでカルシウムと相互的に働き、神経や筋肉の興奮を抑える働きがあります。これによって神経の伝達が行われ、筋肉の収縮もコントロールされるため、体や心臓を動かすためになくてはならない栄養素です。
エネルギー代謝
食べ物を体内で利用できる形に作りかえることを、代謝といいます。マグネシウムは代謝に深く関わる栄養素で、なかでも糖質をエネルギーとして利用できるようにするときと、そのエネルギーを効率よく使うために必要となります。
日本人の1日の摂取量
厚生労働省によると日本人のマグネシウムの推奨量は成人男性で340〜370mg、成人女性で270〜290mgです。妊婦は、さらに40mgが付加量として設定されています。これは試験の結果により4.5mg/kg体重から平均体重などを考慮して算出された値です。
不足すると
マグネシウムが不足すると吐き気や嘔吐、食欲がなくなる以外にも眠気が続いたり、脱力感が起きたりします。また、筋収縮にも大きな役割があるため、筋肉の痙攣や震えがでることもあるのです。長期間にわたってマグネシウムが不足すると骨粗しょう症や心疾患、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める可能性もあるといわれます。
摂り過ぎると
マグネシウムの摂取量が多くなりすぎると、下痢を起こすことが知られています。ただし、初期症状は軽く一時的なものであり、食品からの摂取では起こる可能性が低いです。よって、食事以外のサプリメントなどから摂取量が350mg/日を超えないようにという指標が設定されています。
マグネシウムと糖尿病の関係
マグネシウムは摂取量が減ると吸収率が上がることから、欠乏症にはなりにくいといわれています。しかし、糖尿病の人は慢性的に不足しやすい傾向にあり、アルコールを大量に飲んだ場合や消化器官に異常がある場合にも、不足する可能性が高まるのです。多く含む食品を知って意識的に摂取することは、生活習慣病の予防に効果的です。ここではマグネシウムと糖尿病の関係性について紹介します。
マグネシウムの糖代謝への効果
糖代謝とは食べ物から摂取した糖を体内でエネルギーに変えたり、肝臓や筋肉に糖を一時的に貯蔵したりして、私たちが活動するときに利用できる形を作ることです。マグネシウムはこの糖代謝をする際に、酵素を助ける役割があります。また、糖を細胞内に取り込む際にもマグネシウムが不可欠です。不足すると血液中から糖を取り込めなくなり、血糖値の高い状態が続くので肥満や糖尿病にもつながります。
インスリンと血糖値
食事をして血糖値が高くなると、すい臓からインスリンが分泌されます。インスリンは糖を細胞に取り込んだり脂肪に変えるのを助けたりして、高血糖な状態が続かないように血糖値をコントロールしています。
インスリン抵抗性とは
慢性的に高血糖が続くと、インスリンがきちんと分泌されているにも関わらず、細胞が糖を受け取りにくくなります。これは、インスリンが働きかけても細胞がうまく反応できなくなることで起こるのです。これをインスリン抵抗性と呼びます。糖尿病の人にはこのインスリン抵抗性がみられ、それによってさらに糖尿病の症状が悪化するという悪循環が起こります。
マグネシウムとインスリン抵抗性
インスリン抵抗性が起こる原因の1つに、マグネシウムの不足もあげられます。マグネシウムは糖を細胞に取り入れる際、インスリンが細胞と結合するのを助けます。マグネシウムが不足するとインスリンと細胞間のやり取りがうまくできなくなるため、インスリンの働きが悪くなってしまうのです。
出典:藏前 尚子 著「2型糖尿病におけるマグネシウムの役割」
マグネシウムと生活習慣病
マグネシウムは糖代謝だけでなくさまざまな代謝に関わる栄養素なので、糖尿病以外の生活習慣病とも密接な関係があります。
高血圧と心疾患
マグネシウムはカルシウムとともに筋肉の収縮に関わっているため、不足すると血管の収縮や心臓の動きにも異常をきたすリスクが高まります。
骨粗しょう症
マグネシウムはほとんどを骨に蓄積し、体内で量が不足すると骨から放出する仕組みになっています。慢性的に不足すると骨から出ていく一方になるため、骨粗しょう症のリスクが高まります。
肥満
糖尿病とも関連しますが、高血糖が続いたうえにうまく糖が細胞に取り込めない場合、余分な糖は脂肪として蓄積されます。糖代謝がうまくいかなくなると、肥満をさらに悪化させるリスクが高まります。
マグネシウムを多く含む食品
マグネシウムを多く含む食品にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、植物性食品と動物性食品に分けて詳しく説明します。
植物性食品
マグネシウムを多く含む食品は、植物性のものに多くみられます。なかでも、豆腐などの豆製品や種実類に多く含まれています。取り入れやすい食品なので、意識的に食事に取り入れましょう。
豆類
100gあたりの豆類のなかでは大豆(ゆで)55mgが最も多く、次いでひよこまめ(ゆで)51mg、いんげんまめ(ゆで)47mgがあげられます。また、にがりを使用した木綿豆腐は小パック(150g)で198mg、納豆1パック(70g)で70mg、豆乳は200mlで50mgとなっているので、毎日取り入れやすいものを選ぶとよいでしょう。
種実類
1日あたりに推奨される量の1つかみ(約20g)に含まれる量としては、かぼちゃの種106mg、ひまわりの種78mg、ブラジルナッツ74mg、アーモンド62mg、松の実50mgが多いものとしてあげられます。ナッツ類は間食や料理にも取り入れやすいですが、加工品は塩分や余分な油が含まれるので注意しましょう。
海藻類
乾燥状態の海藻を100gあたりで見てしまうと、日常で使う量と差があることがあるので注意が必要です。1食分(約2g)で考えたときに多いものとしてはあおさ64mg、あおのり28mg、乾燥わかめ22mg、刻み昆布14mg、乾燥ひじき13mgとなります。
野菜類
クロロフィルと呼ばれる色素のなかにマグネシウムを多く含んでいるため、緑色が濃い野菜は含有量が多い傾向にあります。なかでも100gあたりに多く含まれているものとしては、ほうれんそう69mg、ごぼう54mg、モロヘイヤ46mg、春菊26mg、かぼちゃ25mgがあげられます。
動物性食品
動物性食品のなかにもマグネシウムが多く含まれるものがあるので、こちらも意識的に取り入れるとよいでしょう。
魚介類
1食あたりを重量別に見てみると、きんめだい(80g)58mg、あさり(40g)40mg、はまぐり(40g)32mg、さば(80g)24mg、サーモン(80g)22mgとなります。こちらも1食あたりではない数字を提示していることがあるので気をつけましょう。
出典:文部科学省「日本食品成分表2020年版(八訂)」
マグネシウムの摂取不足を防いで糖尿病の改善や予防をしましょう
マグネシウムは糖代謝を助け、糖を細胞内に取り込むことで血糖値を正常な値に保つ働きがあります。不足すると血糖値の高い状態が続き肥満や糖尿病につながります。
糖尿病の人は不足しやすい傾向があるうえに、大量の飲酒をする場合や消化器官の異常により不足する可能性がさらに高まります。マグネシウムを多く含む食品を意識的に摂取し、糖尿病の改善や予防をしていきましょう。
糖尿病を防ぐために「ジョイント」のお食事利用をお勧めいたします!
管理栄養士がカロリーなどを考えて献立作成をしているので糖尿病を予防したいかたにはピッタリです!
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。