食事療法
2022.06.15
透析治療時の水分制限について。飲水や食事での摂取を控える工夫や注意すべきことは?
そもそも透析とは?
透析とは、腎臓の代わりに水分や老廃物を体外へ排出する治療のことです。腎臓の機能が低下すると尿として水分や老廃物がうまく排出されなくなるため、心不全などの症状が出る恐れがあるのです。透析は腎臓の機能を代替する治療であり、その方法は大きく2種類あります。
血液透析
血液透析は「ダイアライザー」という腎臓の代わりになる人工的なフィルターを活用して、血中にある余分な水分や老廃物を除去する治療方法です。一般的には1回の血液透析で4時間ほどの時間を要し、それを1日おきに週3回行います。毎分200mlもの多くの血液を採取してダイアライザーに送り込むため、動脈と静脈をつなぐ手術が必要です。日本の透析患者の約9割は、この血液透析を受けています。
腹膜透析
腹膜透析とは、内臓の表面を包む腹膜に張り巡らされている毛細血管と、カテーテルから送り込まれる透析液を介して、余分な水分や老廃物を除去する透析です。血液透析は「透析液供給装置」という専用の機械を必要としますが、腹膜透析の場合はそのような機械が必要ありません。そのため自宅などでも治療を行えるメリットがあり、治療時間を大幅に節約できます。
透析治療時はなぜ水分の制限が必要?
腎臓の機能が低下すると尿中へ水分や老廃物が排出されづらくなるため、体内の水分量が高くなります。そのため、透析による除水量も増やさなければなりません。除水量を増やすと血圧が低下したり腹膜などに負荷がかかったりするので、体が危険な状態になります。また、仮に透析を行わなくとも、体水分量が増えることで血圧を高めてしまう恐れもあるのです。
透析はドライウェイトを基準に行われる
ドライウェイトとは透析後の目標体重のことで、心胸比や心エコーなどの結果をもとに医師が設定します。ドライウェイトを設定しないと透析時において正確な除水量を把握できないので、体に負担をかける恐れがあるのです。ドライウェイトは定期的に見直しが行われ、おもに心胸比を確認しながら再設定されます。
体重増加に注意する
透析治療中はドライウェイトを目指して食事量や水分摂取量を調整する必要があります。ドライウェイトよりも大幅に体重が増加すると、その分、透析による除水量も増やさなければならないので、体に過度な負担がかかってしまいます。体重増加の許容範囲として、透析治療を1日おきに行う場合はドライウェイトの+3%、2日おきに行う場合は+6%です。体重70kgの人であれば、72.1〜74.2kgの範囲が正常となります。
出典:透析新ライフ「水分摂取量の目安は?」
透析患者が水分摂取を管理するうえで押さえるべきこと
透析治療時の体重増加を抑えるためには、適切に水分摂取を管理する必要があります。そのためには、食事や飲水について工夫をすることが大切です。ここでは、水分摂取を管理するうえで気をつけるポイントを解説します。
食事
食べ物の種類によっては水分が多く含まれている食品があるため、飲水量に気をつけていたとしても指定された水分制限量を超える場合があります。そのため、食事の際は水分量の少ない食品選びをすることが必要です。
水分量が少ない食品を食べる
お米や麺類といった主食は、炊いたり茹でたりする過程で多くの水分を吸収するため水分量が高くなりがちです。そのため、主食を食べる際は餅やパンのような水分が少なめな食品を選びましょう。また、レタスやきゅうりのような水々しい野菜を食べることを控えたり、鍋や汁物の汁は極力飲まないようにしたりすることも大切です。
塩っぱいものや甘いものは控える
塩っけの強いおつまみや甘味の強いお菓子などを食べると水分を欲するため、できるだけ控えるようにしましょう。上記の食品には水分は少ないですが、喉の渇きによって水分をとると1日あたりの水分制限量を簡単に超えてしまいます。
たんぱく質は継続的に摂取する
透析中は普段よりも食事のバリエーションが限られるため、栄養が不足しやすくなります。したがって、体の組織をつくるたんぱく質を継続的に摂取しましょう。たんぱく質は、魚や肉、卵といった良質な動物性たんぱく質をメインに摂取することが大切です。
飲水
飲料水を飲む際は、医師から指示された飲水量を守りましょう。続いて解説するポイントを押さえつつ、上手に水分管理をすることが大切です。
口の中を潤す
うがいをして口の中を潤したり、氷を舐めたりすると喉の渇きが和らぎます。また、ペットボトルに入れた水を凍らせて、溶けた水を少しずつ飲むこともおすすめです。意図的に飲水量を制御できるので、水を衝動で飲むことを防げます。
水筒やペットボトルで飲水量を管理する
水分制限のコツは、1日に飲む水分量をあらかじめ決めておくことです。たとえば、1日に500mlの水分制限を指定されている場合は、500mlのペットボトルや水筒に水などを入れておきます。そうすることで500mlの水を1日で飲み切るように飲水量を調整できるため、過剰な水分摂取を防げます。
飲水以外にも注意する
透析治療中の水分制限では、塩分やカリウム、リンの摂取量にも注意が必要です。塩分量が上昇すると、体内の水分濃度を薄めようと水分を欲してしまうため、水分摂取量が多くなります。すると体水分量が上昇し、心臓などに負担をかけるだけでなく「むくみ」にもつながります。また、腎機能が低下している状態だとカリウムやリンを体外へ排出しにくくなるため、高カリウム血症や高リン血症になる恐れもあるのです。透析治療中は、飲水以外にも注意しましょう。
減塩のために調理方法を工夫する
透析患者の1日の塩分摂取目安量は6g未満です。減塩のために、調味料の種類や量に気をつけましょう。醤油やソース、味噌といった調味料は塩分量が高めなので、香辛料や出汁などを活用して味付けします。もし塩分量の高い調味料を使用する場合は、事前に測っておくことが大切です。
出典:透析新ライフ「1日に摂取する食塩量」
カリウム・リンが含まれる食品は控える
高カリウム血症や高リン血症になると、不整脈や心不全、細胞の壊死といった重篤な症状を引き起こす恐れがあります。そのため、腎機能が低下している状況では、カリウムやリンを含む食品はなるべく避けましょう。カリウムは、生野菜、芋類、ほうれん草、バナナなどの果物に多く含まれます。リンは、ソーセージやハムなどの加工食品や、ヨーグルト、チーズのような乳製品に多く含まれています。
お食事に制限のある方にもオススメ
ジョイントのお弁当は管理栄養士が監修していて、お食事に制限のある方にもオススメです。冷凍のお弁当なのでレンジで温めるだけで手軽に食事内容を制限しつつ、無理なく続けることが出来ます。
透析患者は1日の水分管理を工夫することが大切
透析中の水分制限は、治療が成功するかしないかを左右するほど重要です。とはいえ、透析前にあたり前に摂取していた水分が制限されると、キツいと感じるかもしれません。この記事で紹介した食事や飲水方法を参考にして、上手く水分管理をしましょう。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。