食事療法
2022.04.27
飲食を助けるとろみ剤の使い方とは?種類や注意すべき3つのポイントを解説
とろみ剤が必要な理由
とろみ剤とは飲み物や液状の食べ物の濃度を高めて、飲み込みやすくするために使われるものです。なぜ液体にとろみをつける必要があるのか、またどのような人が必要としているのかについて詳しく紹介します。
とろみ剤は誤嚥を防ぐ
とろみ剤の主な目的は、誤嚥を防ぐことです。誤嚥とは本来食道に入るはずの飲料や食品が、誤って気管に流れ込んでしまうことをいいます。特に流れ込むスピードが速い飲み物や汁物などは、とろみ剤を用いて濃度をつけることで流れ込むスピードを遅くし、誤嚥を防げるのです。
嚥下とは
人は食べ物を飲み込む際に喉の一部が気管を塞ぎ食道側を開くことで、スムーズにものを胃に運ぶ仕組みができています。これを嚥下といいます。一瞬の間に体のさまざまな筋肉が関わり合ってスムーズな流れを作っているため、どこかの筋肉の反応が遅れただけでもうまくいかなくなるのです。
誤嚥性肺炎とは
本来気管に誤ってものが入り込むと咳が出て、うまく外に出すメカニズムができています。しかし、それがうまく外に出せず肺に入ることで炎症を起こす可能性があるのです。これを誤嚥性肺炎といいます。
とろみ剤が必要な人
嚥下の仕組みは、筋力の低下とともに衰えます。脳梗塞などが原因で口から喉にかけて麻痺が残っている人や、筋力が衰えている高齢者に多く見られます。これらの人は誤嚥性肺炎を防ぐために、とろみ剤が必要です。
とろみの種類を知る
とろみ剤を使う際には、用いる人に合わせた加減をすることが必要です。まずはとろみの目安を知り、適量のとろみ剤を用いましょう。
とろみの目安と飲み込みやすさ
とろみの加減は、大きく3つに分かれます。とろみが強すぎる液体は、かえって飲み込みづらくなることもあるので注意が必要です。それぞれの見た目や、飲み込むときの様子についてまとめました。
濃いとろみ
濃いとろみは、スプーンを傾けても、形がある程度保たれて流れ落ちない様子を指します。フォークにのせれば歯の上で保たれ、ストローでは吸えないような濃度になります。口に入れるとまとまりがよく飲み込む力が必要です。「食べる」という表現がしっくりくるようなかたさです。
中程度のとろみ
中程度のとろみは、スプーンを傾けた際に、ゆっくりと流れ落ちる様子を指します。フォークの歯の間から流れ出て、ストローで吸うときには少し力を要するような濃度です。舌の上でまとまりやすく、とろみをはっきり感じられます。「飲む」という表現が適したかたさです。
薄いとろみ
薄いとろみは、スプーンですくうと、すぐに流れ落ちていく様子を指します。フォークの歯からさらさらと落ち、ストローでも簡単に吸えるような濃度になります。ものによってはとろみがついていることを感じにくく、飲み込むのには力を要さないため、「飲む」という表現が適したかたさです。
出典:日本摂食嚥下リハビリテーション「学会嚥下調整食分類2021」
とろみ剤の種類
とろみ剤にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると3つのタイプに分かれます。それぞれの特徴は以下のとおりです。目的や用途に合わせて、適切な種類のものを選ぶようにしましょう。
でんぷん系
最も古くからあるとろみ剤です。安定するのは比較的早いのですが、でんぷんや加工でんぷんを原料としているため、でんぷんを分解する働きを持つ唾液の影響で、口に入れると濃度が下がってしまいます。またぼたっとした濃度で、とろみをつけるまでに量が必要です。ものによっては、味や風味にも影響が出ます。それと、時間が経つと離水と呼ばれる現象でとろみが弱くなります。
キサンタンガム系
原料はでんぷんや増粘多糖類が使われていますが、でんぷん系と違って唾液の影響を受けづらくなっています。とろっとした濃度で、少量でもとろみがつきやすいのが特徴です。ただ、量を増やしすぎるとべたっとした感じになりやすいことや、温度によって濃度のつきかたにムラが見られることもあります。また、時間が経つことで濃度の変化も見られます。
グアガム系
最も新しいタイプのとろみ剤で、原料に増粘多糖類が使われています。唾液の影響は受けず、少量で早くとろみがつくのが特徴です。するっとした濃度でべたつきにくく、時間が経っても濃度の変化が見られません。また、味や風味への影響が少なく、3種類の中では1番使いやすいとろみ剤です。ただし、使用する食品によっては安定するまでに少し時間のかかるものや、温度により濃度のつきかたが変わります。
出典:e健康ショップ「とろみ調整食品」
とろみ剤を使う際に注意すべき3つの注意点
ここからは実際にとろみ剤を用いる際に、注意する点をお伝えします。とろみ剤は使い方を間違えるとその人の健康を著しく損ねる恐れがあるため、使用する前にしっかりと理解を深めておく必要があります。
混ぜ方に注意する
まず、とろみ剤を飲み物や食べ物に加えたら、すぐにしっかりと30秒程度かき混ぜることがポイントです。使う道具は箸やスプーン、マドラーでも構いませんが、小さな泡だて器を用いるとしっかりと混ざります。また、とろみ剤を量りながら何回かに分けて加えると、後から加えたとろみ剤がうまく溶けないこともあるので注意が必要です。
ダマにならないようにする
とろみ剤を加えてからすぐにかき混ぜないとダマが残ってしまい、その分全体のとろみが必要な濃度にならないことがあります。また、製品によって溶けにくさが異なるので、液体をかき混ぜながら少しずつ一度にとろみ剤を加えると、ダマがなく均一に濃度をつけられます。
使う食品に注意する
とろみ剤を加える食品によっては、とろみがつきにくいものも存在します。基本的に水やお茶以外の純粋な液体以外のものは、とろみがつきにくいと考えたほうがよいでしょう。そういったものにとろみをつける際にはポイントがあるので、それらを踏まえて適切な使い方をしましょう。
飲み物に使う場合
飲み物の中でとろみがつきにくいものとしては、牛乳や果汁ジュースなどがあげられます。これらにとろみをつける際には、二度混ぜと呼ばれる方法を用います。これはとろみ剤を加えてから5〜10分待ち、さらにもう一度しっかり混ぜるという方法です。そうすることで均一にとろみ剤が混ざり、一度目に混ぜたときよりもしっかりと濃度がつきます。
汁物に使う場合
具材がある場合はうまく混ざらないので、汁と具に分けて液体だけの状態にしてからとろみ剤を加えます。また、アツアツの状態では冷たいものと比べてとろみが緩くなりやすいので、少し冷ましてから混ぜると調整しやすくなります。
とろみ加減に注意する
とろみ剤は混ぜた直後にはちょうどよいと思っても、少し時間を置くことで濃度が強くなることがあります。混ぜている途中や混ぜ終わった直後ではなく、2〜3分、時間をおいてとろみの状態が安定してから濃度のチェックをしましょう。強すぎるとろみは喉に張り付くなど危険な場合があるため、濃度の確認は慎重に行ってください。
とろみ加減を変えたい場合
とろみの加減を確認したときに、濃すぎたり薄すぎたりした場合の対応方法です。濃すぎた場合は、同じ液体を追加してよく混ぜます。逆に薄すぎた場合は、直接とろみ剤を粉末のまま加えてしまうとダマになるため避けてください。新しく同じ液体で濃いとろみのものを作り、それを薄すぎた元の液体に加えて調整します。ただ、調整が難しいので、慣れないうちは作り直すことをおすすめめします。
とろみ剤をうまく使って安心・安全で豊かな食事を
誤嚥性肺炎は命の危険を伴うため、嚥下がスムーズに行えない人にとって液体の食べ物や飲み物は危険なものになりえます。しかし、食事が限られてしまうことは食べる楽しみを失くすことにつながります。食事は1日に3回もあるので、そういった人たちの食生活が少しでも豊かになるよう、正しい知識を持ってとろみ剤をうまく活用していきましょう。
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1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。