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2022.04.20
ビタミンB群が多い食品とは|それぞれの作用と食事の仕方を知って吸収率を上げよう
ビタミンB群とは
まずは、ビタミンB群とはどのようなものかを解説します。
水溶性ビタミンの一種
ビタミンは油に溶けやすい脂溶性ビタミンと、水に溶けやすい水溶性ビタミンに分けられます。ビタミンB群は水溶性ビタミンに属します。さらに、ビタミンB1、B2、B6、B12、ビオチン、ナイアシン、パントテン酸、葉酸に分けられるのです。
ビタミンB群の種類と作用
ビタミンB群には8種類のビタミンがありますが、それぞれ作用が異なります。ここでは各ビタミンの働きと、食品の含有量について解説します。
ビタミンB1
別名チアミンと呼ばれ、体内で糖質をエネルギーに変換する際に補酵素として働くビタミンです。また、皮膚や粘膜を保護して肌荒れを予防したり、脳神経を正常に維持したりする働きもあります。ビタミンB1が不足すると食欲が減退して疲れやすくなり、動機やむくみなどが出始めます。慢性的に不足すると、末梢神経障害や中枢神経障害が出てくることもあるのです。
ビタミンB1が多い食品
100gあたりにビタミンB1が多い食品と含有量は、以下のとおりです。疲労回復効果で有名なうなぎや豚肉をはじめ、米や小麦、大豆にも豊富に含まれています。
- うなぎ/かば焼き(0.75mg)
- 豚肉/もも/赤肉(0.96mg)
- 小麦/小麦はいが(1.82mg)
- 大豆/乾(0.71mg)
- 落花生/乾(0.41mg)
- こめ/玄米(0.41mg)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビタミンB2
別名リボフラビンと呼ばれ、体内で脂質をエネルギーに変換する際に補酵素として働くビタミンです。また、血液中の酸素を細胞へ運ぶ役割を持つ赤血球やヘモグロビンの産生にも必要不可欠なビタミンです。ビタミンB2は粘膜を保護する働きがあるため、不足すると口内炎や口角炎、肌荒れなどが顕著に現れます。
ビタミンB2が多い食品
100gあたりにビタミンB2が多い食品と含有量は、以下のとおりです。ビタミンB2は豚や鶏のレバーに多く含まれているほか、アーモンドや卵にも多く含まれています。
- 豚/肝臓(3.60mg)
- 鶏/肝臓(1.80mg)
- アーモンド/乾(1.06mg)
- 鶏卵/全卵(0.37mg)
- 海藻/焼きのり(2.33mg)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビタミンB6
別名ピリドキシンと呼ばれ、主に体内でたんぱく質をアミノ酸に分解する際の補酵素として働きます。糖質制限やダイエットによりたんぱく質の摂取量が多い場合は、ビタミンB6も積極的に摂取する必要があります。また、免疫機能を正常に保ったり脳の神経伝達物質の合成を促進させたりする働きもあるのです。
ビタミンB6が多い食品
100gあたりにビタミンB6が多い食品と含有量は、以下のとおりです。まぐろの赤身とバナナに多く含まれており、どちらも生で食べられるので栄養素を効率よく摂取できます。
- 小麦/小麦はいが(1.24mg)
- こめ/玄米(0.45mg)
- バナナ/生(0.38mg)
- まぐろ/びんなが(0.94mg)
- まぐろ/めばち/赤身(0.72mg)
- まぐろ/きはだ(0.64mg)
- にんにく/生(1.53mg)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビタミンB12
別名コバラミンと呼ばれ、ほかのビタミンB群の補助が主な役割です。葉酸と一緒にヘモグロビンを作る働きがあるため、不足すると悪性貧血を引き起こします。その働きから、「造血ビタミン」とも呼ばれます。
ビタミンB12が多い食品
100gあたりにビタミンB12が多い食品と含有量は、以下のとおりです。ビタミンB12は、貝類と豚や鶏のレバーに多く含まれています。
- かたくちいわし/生(14.μg)
- しらす干し/半乾燥(6.3μg)
- しじみ/生(68.0μg)
- あさり/生(52.0μg)
- 牡蠣/生(23.0μg)
- 鶏/肝臓(44.0μg)
- 豚/肝臓(25.0μg)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ナイアシン
植物に多く含まれているニコチン酸と、動物に多く含まれているニコチン酸アミドの総称です。ナイアシンにはエネルギー産生の補酵素となる働きや、DNAやホルモンの合成を促進させる作用があります。ナイアシンの欠乏症はペラグラと呼ばれ、皮膚炎、頭痛やめまいなどの神経症状、下痢などの消化器症状が現れます。
ナイアシンが多い食品
100gあたりにナイアシンが多い食品と含有量は、以下のとおりです。まぐろやかつおといった魚類のほか、落花生にも多く含まれています。
- 落花生/乾(22.0mgNE)
- かつお/生(22.0mgNE)
- かつお/油漬け/フレーク(19.0mgNE)
- たらこ/生(54.0mgNE)
- まぐろ/びんなが/生(26.0mgNE)
- まぐろ/きはだ/生(22.0mgNE)
- まぐろ/めばち/生(20.0mgNE)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
ビオチン
別名ビタミンHと呼ばれており、美容に効果的な働きをします。皮膚や粘膜を保護するほか、髪や爪を健康に保つ働きもあります。ビオチンは多くの食品に含まれており、さらにはヒトの腸内細菌でも生成されるため不足することはないでしょう。
ビオチンが多い食品
100gあたりにビオチンが多い食品と含有量は、以下のとおりです。鶏のレバーのほか、卵黄にも多く含まれています。しかし、卵黄にはビオチンの吸収を阻害する物質も含まれているため、調理方法に工夫が必要です。
- 鶏/肝臓/生(230.0μg)
- 鶏卵/卵黄/生(65.0μg)
- 鶏卵/全卵/生(24.0μg)
- 落花生/乾(92.0μg)
- 大豆/乾(28.0μg)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
パントテン酸
ビタミンB12やナイアシンと共に、脂肪酸を燃焼させる働きをします。不足すると脂肪酸の燃焼が減退し、脂肪が蓄積されやすくなります。パントテン酸は多くの食品に含まれているため、不足することはないでしょう。
パントテン酸が多い食品
100gあたりにパントテン酸が多い食品と含有量は、以下のとおりです。鶏や豚の肝臓に多く含まれているほか、たらこや卵などにも含まれています。
- 鶏/肝臓/生(10.0mg)
- 豚/肝臓/生(7.19mg)
- 納豆(3.60mg)
- たらこ/生(3.68mg)
- 鶏卵/卵黄/生(3.60mg)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
葉酸
ビタミンB12と共に赤血球の生成に不可欠であり、主に血液を作る働きに関与しています。そのため、葉酸が不足すると葉酸欠乏性貧血を引き起こしてしまうのです。また、 妊娠中の葉酸欠乏により、乳児の脊髄異常や脳の先天異常の報告もあります。妊娠を考えている女性や妊娠中の女性は、葉酸を積極的に摂取することで予防できるため、積極的な摂取が推奨されています。
葉酸が多い食品
100gあたりに葉酸が多い食品と含有量は、以下のとおりです。水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質をもっており、調理方法によっては摂取量を半減させてしまいます。
- ほうれん草/生(210μg)
- 枝豆/生(320μg)
- しらす干し/半乾燥(58μg)
- 鶏卵/卵黄/生(150μg)
- 鶏卵/全卵/生(49μg)
出典:文部科学省「食品成分データベース」
1日に必要な摂取量
以下は、日本人の食事摂取基準で定められているビタミンB群の推奨量を抜粋しています。
ビタミンB群の推奨量(18歳以上・身体活動レベルIIふつう) | ||
男性 | 女性 | |
ビタミンB1 | 1.4mg | 1.1mg |
ビタミンB2 | 1.6mg | 1.2mg |
ビタミンB6 | 1.4mg | 1.1mg |
ビタミンB12 | 2.4μg | 2.4μg |
ナイアシン | 15mgNE | 11mgNE |
ビオチン | 50μg | 50μg |
パントテン酸 | 5mg | 5mg |
葉酸 | 240μg | 240μg |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
摂取不足に気を付けよう
ビタミンB群は水溶性ビタミンのため、身体に必要な分以外は尿や汗として体外へ排出されます。過剰症の心配はありませんが、摂取量が不足するとさまざまな健康障害が出てくるので、推奨量を目安に摂取を心掛けましょう。
妊娠中・授乳中の付加量
妊娠中や授乳中は、母体を通して胎児や乳児に栄養を供給しています。、そのため、栄養不足にならないように、推奨量よりもさらに多い摂取量が必要になるのです。この量を付加量と呼び、ビタミンB群でも設定されています。
推奨量(1日あたり) | 妊婦(付加量) | 授乳婦(付加量) | |
ビタミンB1 | 1.1mg | +0.2mg | +0.2mg |
ビタミンB2 | 1.2mg | +0.3mg | +0.6mg |
ビタミンB6 | 1.1mg | +0.2mg | +0.3mg |
ビタミンB12 | 2.4μg | +0.4μg | +0.8μg |
ナイアシン | 11mgNE | 0 | +3mgNE |
ビオチン | 50μg | +50μg | +50μg |
パントテン酸 | 5mg | +5mg | +6mg |
葉酸 | 240μg | +240μg | +100μg |
なかでも、妊娠を計画している女性や妊娠初期の妊婦は、胎児の神経菅閉鎖障害予防のためにも葉酸の摂取が重要となります。日本人の食事摂取基準(2020年版)には、1日400μgの葉酸を摂取することが望ましいと記載されています。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ビタミンB群の吸収率を上げる方法
ビタミンB群は、食品同士を組み合わせることで吸収率を上げられます。ここでは、吸収率を上げる方法と食品の組み合わせを解説します。
調理方法を工夫する
まずは、ビタミンB群を効率よく摂取するためにおすすめの調理方法を解説します。
汁まで一緒に食べる煮込み料理
ビタミンB群は水に溶けやすい性質があるため、調理過程で水に流れ出てしまいます。流れ出たビタミンを余すことなく摂取するには、汁まで一緒に食べる煮込み料理がおすすめです。
「茹でる」よりも「蒸す」
茹でるとビタミンが流れ出てしまい、摂取量が少なくなります。蒸し料理にすることでビタミンの流出を予防し、効率よく摂取できます。
卵に多く含まれるビオチンは過熱する
卵の黄身には、ビオチンの吸収を阻害する「アビジン」という物質が含まれていますが、加熱に弱い性質があります。卵を摂取する場合はしっかりと加熱することでアビジンが分解され、ビオチンを効率よく摂取できるでしょう。
ビタミンB1はニンニクや玉ねぎと一緒に食べる
ビタミンB1は、豚肉やうなぎなどの食品に多く含まれています。ビタミンB1の吸収率を上げる食品は、玉ねぎやニンニク、ニラなどです。これらの食品には、「アリシン」という物質が含まれています。アリシンは、ビタミンB1と結合してチアミンとなり、吸収率が上がります。
ビタミンB2とB6は一緒に摂取する
ビタミンB6は、ビタミンB2のサポートを受けて活性型ビタミンへと変化します。ビタミンB2が不足すると、必然的にビタミンB6も不足します。効率よく吸収するには、ビタミンB2を含む食品とB6を含む食品の同時摂取が有効です。
ナイアシンはビタミンB1、B2、B6と一緒に摂取する
ナイアシンは糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関与し、エネルギーを産生する働きがあります。三大栄養素の代謝に作用するビタミンB1、B2、B6を含む食品と一緒に摂取することで、より高い効果が得られます。
葉酸とビタミンB12はビタミンCと一緒に摂取する
ビタミンB12、葉酸ともに体内で赤血球を合成し、血液を作ります。さらに、DNAを合成したりホモシスチンの濃度を低下させたりする働きもあります。つまり、お互いに協力しながら効率よく作用しているのです。これらは、ビタミンCと同時に摂取することで、吸収率が上がります。
アルコールを摂取する人はビタミンB1、B6、B12、パントテン酸を積極的に摂取する
アルコールを過剰に摂取すると、大量のビタミンが失われます。飲酒によって引き起こる神経障害は、飲酒による食生活の乱れや栄養バランスの偏りが原因といわれています。なかでもアルコールの代謝に関与しているビタミンB1とB6、B12、パントテン酸は、慢性的な不足状態が続くのです。
サプリメントを上手に活用しよう
水溶性ビタミンであるビタミンB群は過剰症の心配がないため、不足分はサプリメントで補えます。ビタミンB群は三大栄養素の代謝に必要なビタミンなので、食後に摂取するのがおすすめです。
サプリメントの摂りすぎには注意
サプリメントは、食事で不足した分を補うための補助的な役割です。そのため、サプリメントのみでビタミンを補給するなどの考え方は避けましょう。
バランスのとれた食事でビタミンB群をしっかり摂取しよう!
ビタミンB群は、三大栄養素の代謝に深く関与する重要なビタミンです。水溶性ビタミンのため過剰症の心配はありませんが、摂取不足による欠乏症には気を付けましょう。特に妊娠を希望している場合や妊娠中の女性、飲酒習慣のある人は積極的に食事からビタミンB群を摂取しましょう。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。