2022.03.02
高齢者向けの食べやすい高カロリーレシピ特集。栄養バランスを考えて調理方法を工夫しよう
高齢者には高カロリーが必要?
高齢者の食事のレシピを考える際には、高カロリーを意識することも大切なポイントです。
ここでは、高齢者に高カロリーが必要な理由や、積極的に摂取したい栄養素などについて解説していきます。
高齢者に高カロリーが必要な理由
カロリーとは、生きるために必要なエネルギーのことです。私たちは食事を摂取することで、カロリーを得て活動しています。
高齢者は食べる機能の低下や活動量の減少などの要因から食事量が減り、体に必要なカロリーを摂取できなくなることがあります。体にとって不可欠なエネルギー源を摂取できなければ、体重が減ったり栄養状態が悪化したりと、健康な体を保てなくなるのです。そのため、少量の食事でも効率よくカロリーが摂取できるレシピを考えることが必要なのです。
高齢者に必要なカロリー
厚生労働省では、カロリー摂取量の目安が設けられています。高齢者の1日あたりの目安量(推定エネルギー必要量)は以下のとおりですが、日常生活での活動量や体格などによっても必要とするカロリーは異なります。あくまでも目安と考えておきましょう。
1日あたりの推定エネルギー必要量(kcal) | ||
年齢/性別 | 男性 | 女性 |
65~74(歳) | 2,050~2,750 | 1,550~2,100 |
75以上(歳) | 1,800~2,100 | 1,400~1,650 |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「高齢者」
高齢者はたんぱく質不足にも注意
たんぱく質が不足すると、低栄養を招きやすくなります。また、サルコペニアやフレイルを引き起こす原因となります。
サルコペニアとフレイル
サルコペニアは、加齢に伴い筋肉が減少していく状態です。フレイルは、加齢に伴う筋力の低下に加え精神的、心理的、社会的な要因により健康が損なわれやすくなった状態を指します。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、高齢者のフレイル予防を目的としたたんぱく質の摂取量は定められていません。ですが、以下の推奨量を下回らないよう十分摂取することが望ましいとしています。
1日あたりのたんぱく質摂取推奨量(g) | ||
年齢/性別 | 男性 | 女性 |
65~74(歳) | 60 | 50 |
75以上(歳) | 60 | 50 |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
高齢者が補うべき栄養素
高齢者の食事では、ビタミンやミネラルもバランスよく摂取する必要があります。特に、高齢者の骨折を予防しQOL(生活の質)を損なわないためには、ビタミンDやカルシウムの摂取が重要です。
この2つの栄養素の不足は、骨粗鬆症の危険因子となります。骨粗鬆症は骨折のリスクを高めるだけではなく、サルコペニアやフレイルのリスクを高めることも明らかにされています。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「骨粗鬆症の予防のための食生活」
出典:吉村 典子「骨粗鬆症の疫学-地域住民コホートROADスタディより-」(The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 2019 年 56 巻 5 号 p. 344-34)
高齢者の食事における調理のポイント
高齢者の食事を高カロリーにするだけでなく、レシピを考えたり調理したりする際に知っておきたい基本的なポイントがあります。ここではレシピを考える際のポイントなどに加え、介護が必要な高齢者に対する注意点などについて紹介します。
栄養バランスのよいレシピを考える
まずは、栄養バランスのよいレシピを考えましょう。「栄養バランスのよい食事」とは、以下のものを組み合わせた食事のことです。
- 主食…ご飯やパンなど
- 主菜…肉・魚などのたんぱく質を多く含む食材を使ったおかず
- 副菜…野菜やきのこ類、海藻類など
栄養バランスのよいレシピを考える手順
以下の手順でレシピを考えることで、高齢者にも適した栄養バランスのよい献立が完成します。
- 主食を決める(ご飯・パン・麺など)
- メインのおかずを決める(主菜:肉・魚・大豆製品・卵)
- そのほかのおかずを決める(副菜:野菜・きのこ・海藻)
高齢者が食べやすいよう調理法を工夫する
高齢者の食事にとって重要なのは、食べる機能に合わせて食べやすく工夫することです。
高齢者が噛みやすい工夫をする
細かくカットするのはもちろんですが、以下のような調理の工夫をすることでより食べやすくなります。
- 鶏肉の皮や野菜の皮は取り除く
- 野菜類や肉類は切り込みを入れたり、繊維を断つようにカットしたりする
- 「焼く・炒める」よりも「煮る・蒸す」
高齢者が飲み込みやすい工夫をする
飲み込む機能が低下すると、「誤嚥」を引き起こすことがあります。誤嚥とは、食べ物や唾液を飲み込んだときに気管に入ってしまうことです。飲み込む機能がさらに低下するとむせ返しができなくなり、肺炎を引き起こすことがあります。
水分や細かく刻んだ食材でむせるようになってきた場合は、適宜トロミ剤を利用するのがおすすめです。飲み込みにくいパサパサしたもの、口の中に張り付くものは避けるようにしましょう。
介護が必要な高齢者の場合の注意
食事で介護が必要な高齢者の場合、食べる姿勢や食事にかける時間なども重要です。姿勢が悪かったり食事に時間がかかり過ぎたりすると、誤嚥のリスクが高まってしまいます。
食事の彩りなども考慮し、見た目でも食欲をそそるような工夫を心掛けてみましょう。
味付けに配慮する
高齢者は血圧が高めの人も多いため、塩分控えめが基本です。しかし、必要以上にうす味にしてしまうと、食欲が失われてしまうことがあります。
このような場合は食べる人の好みに合わせて、以下のような工夫をしてみるとよいでしょう。
- 酸味や香辛料を活かす
- 旨味を活かす
- メリハリをつけた味付けを心掛ける(主菜は濃いめ、副菜はうす味にするなど)
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手軽にカロリーをアップさせる方法
高齢者の食事を手軽に高カロリーにできるポイントを、いくつか紹介します。
脂質を含む食材を活用する
高カロリーにするためには、脂質を適度に含む食材を食事に加えることがポイントです。
脂質を含む手軽な食材といえば、乳製品や卵が挙げられるでしょう。コーヒーに牛乳を加えたりサラダにゆで卵を半分加えたりするだけでも、高カロリーにできます。
また、マヨネーズは料理を高カロリーにできるだけでなく、いろいろな食材に混ぜ合わせるとまとまりが出て食べやすくなります。
脂質が高齢者の高カロリー食に役立つ理由
脂質は、炭水化物・たんぱく質とともにカロリーをつくり出す「エネルギー産生栄養素」です。炭水化物とたんぱく質は、1gあたり4kcalのカロリーをつくり出します。一方脂質は1gあたり9kcalと、より高カロリーのエネルギーをつくり出します。そのため、脂質を上手に活用すると効率よく高カロリーにできるのです。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
間食を取り入れる
食事回数が増えて1日あたりの摂取カロリーをアップできるのが、間食(おやつ)です。卵や乳製品を活用したプリンやゼリーは高カロリーにできるだけではなく、たんぱく質もしっかりと摂取できます。
また、以下のようなものも、食べやすく高カロリーな食べ物です。
- アイスクリーム
- ホイップクリーム
- こしあん
もっと手軽に効率よく高カロリーにしたい場合は、市販の栄養補助食品なども活用してみましょう。
簡単おいしい高カロリーなレシピ10選
高齢者が食べやすい、高カロリーなレシピを紹介します。
高カロリーが期待できる肉料理・魚料理のレシピ
たんぱく質を十分に摂取することも、高齢者の食事にとって重要です。ここでは、高カロリーかつたんぱく質豊富な肉や魚を使ったレシピを紹介します。
クリームシチュー
家庭料理の定番「クリームシチュー」です。高齢者も食べやすいメニューで、乳製品を利用していることからも高カロリーが期待できる一品です。
- 材料は鶏もも肉、じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、サラダ油、シチューのルウ、牛乳です。
- 具材をサラダ油で炒めます。
- 水を加え、具材がやわらかくなるまで煮込みましょう。
- 具材がやわらかくなったらシチューのルウ、牛乳を加え、さらに少し煮込んだら完成です。
鶏だんごのすき焼き風
鶏がらスープの素を使った旨みたっぷりのすき焼き風の煮物は、高齢者も食べ慣れたメニューのひとつでしょう。春雨を加えて、より高カロリーに仕上げます。
- 材料は鶏ひき肉、ねぎ、生姜、塩、酒、片栗粉(タネ)、豆腐、春雨、大根、白菜など(食べやすい野菜)、水、鶏がらスープの素、しょうゆ、砂糖、酒(スープ)です。
- 鶏ひき肉、ねぎ、生姜、塩、酒、片栗粉を混ぜ合わせ、鶏だんごを作ります。
- 豆腐、野菜は食べやすい大きさにカットしておきましょう。
- スープの材料を煮立て、鶏だんごのタネ、野菜、豆腐を入れて煮込みます。
- 最後に春雨を入れて完成です。
鮭のマヨポテチーズ焼き
マヨネーズとチーズを使った、魚料理の高カロリーレシピです。肉が苦手な高齢者でも、高カロリーな料理を食べられます。
- 材料は鮭、バター、じゃがいも、マヨネーズ、とろけるチーズです。
- 鮭は一口程度にカットし、骨があれば取り除いておきましょう。
- じゃがいもは皮を剥いて適当な大きさにカットし、電子レンジでやわらかくなるまで加熱します。
- フライパンにバターを溶かし、鮭を焼きましょう。
- 鮭に火が通ったら、じゃがいもとともに耐熱皿に移して全体にチーズをかけます。
- オーブントースターで焼いて、チーズが溶けたら完成です。
白身魚の唐揚げ野菜あんかけ
油で揚げ、あんかけをかけることで高カロリーが期待できるメニューのレシピです。
- 材料はお好みの白身魚、片栗粉、塩、こしょう、サラダ油、玉ねぎ、にんじん、しょうゆ、みりん、だし汁です。
- 魚に塩こしょうなどで下味をつけ、片栗粉をつけて油で揚げましょう。
- あんを作ります。玉ねぎ、にんじんを炒め、だし汁を加えたらしょうゆとみりんで味を調え、片栗粉でとろみをつけます。
- 唐揚げに野菜あんをかけて完成です。
高カロリーが期待できる卵料理のレシピ
卵は肉や魚と同じようにたんぱく質を摂取できるうえ、高カロリーにするのに適した食材です。また、高齢者が食べやすい食材のひとつでもあるため、いろいろなレシピを考えておくととても重宝します。
中華風豆腐の卵とじ
鶏がらスープとごま油を使った、簡単にできる中華風卵とじのレシピです。野菜をあらかじめごま油で炒めることでしんなりと食べやすく、かつ高カロリーに仕上げられます。
- 材料は絹ごし豆腐、卵、玉ねぎ、にんじん、ごま油、鶏がらスープの素です。
- 玉ねぎ、にんじんをごま油で炒め、しんなりしたら水と絹ごし豆腐を加えましょう。
- ひと煮立ちしたら鶏がらスープで味を調え、卵でとじたら完成です。
チーズ入りスクランブルエッグ
スクランブルエッグにチーズと牛乳を加えるだけの、簡単に高カロリーにできるレシピです。バターをたっぷり使って、ふんわりと仕上げましょう。
- 材料は卵、塩こしょう、とろけるチーズ、牛乳、バターです。
- 卵、塩こしょう、とろけるチーズ、牛乳を混ぜ合わせます。
- フライパンにバターを溶かし、卵液を炒めたら完成です。
高カロリーが期待できる野菜料理のレシピ
体の調子を整えてくれるビタミンやミネラル類を含む野菜は、しっかり取り入れておきたい食材です。特にいも類は高カロリー食に適しているため、活用してみてください。
ポテトグラタン
グラタンは、高齢者でも食べやすいメニューのひとつです。じゃがいもをたっぷり使って、より高カロリーに仕上げましょう。
- 材料はじゃがいも、ベーコン、玉ねぎ、バター、ホワイトソース缶、牛乳、塩こしょう、コンソメ、とろけるチーズです。
- じゃがいもは一口大にカットして電子レンジでやわらかくなるまで加熱し、少し潰しておきます。
- ベーコンとスライスした玉ねぎをバターで炒めましょう。
- 玉ねぎがしんなりしたら、ホワイトソース缶と牛乳、塩こしょう、コンソメを加えます。
- 耐熱皿にじゃがいもとベーコンと玉ねぎのホワイトソースを入れ、とろけるチーズを乗せます。
- オーブンで焼いたら完成です。
ブロッコリーのツナマヨサラダ
マヨネーズとツナ、ブロッコリーを和えるだけの、簡単なサラダのレシピです。オイル漬けのツナ缶とマヨネーズで、食べやすく高カロリーなサラダになります。
- 材料はブロッコリー、ツナ缶、マヨネーズです。
- ブロッコリーは、やわらかめに茹でましょう。
- 茹で上がったブロッコリーの粗熱を取り、ツナ缶とマヨネーズで和えたら完成です。
高カロリーが期待できるデザートのレシピ
高齢者は食が細くなりがちです。このような場合は、デザートを活用して高カロリーにしてみましょう。ここでは、高カロリーのデザートレシピを紹介します。
抹茶プリン
高齢者向けのデザートでもあるプリンを、抹茶風味に仕上げたレシピです。トッピングでさらに高カロリーにできますので、お好みで添えてみてください。
- 材料は抹茶、牛乳、生クリーム、砂糖、ゼラチンです。
- 抹茶はダマ防止のために茶こしなどで振るい、砂糖と混ぜ合わせます。
- 鍋に入れた牛乳と生クリームを、沸騰直前まで温めます。
- 鍋の火を止め、抹茶と砂糖、ふやかしておいたゼラチンを鍋に加えてよく混ぜましょう。
- 容器に移し、冷蔵庫で冷やし固めたら完成です。
- お好みでホイップクリームやあんこをトッピングすると、より高カロリーになります。
いもようかん
家庭でも簡単に作れる、いもようかんのレシピです。少し水分を多めにしてなめらかに仕上げると、高齢者でも食べやすいいもようかんに仕上がるでしょう。
- 材料はさつまいも、粉寒天、砂糖です。
- さつまいもは皮を剥き輪切りにし、水にさらしておきましょう。
- さつまいもを電子レンジで加熱したり茹でたりして、やわらかくします。
- やわらかくなったさつまいもを潰したりフードプロセッサーにかけたりして、ある程度なめらかにしましょう。
- 粉寒天と水を加えて火にかけ、沸騰したら砂糖を加えひと煮立ちさせます。
- そこへさつまいもを加えてよく混ぜ合わせたら、容器に入れて冷やし固めましょう。
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食べやすい高カロリーレシピで高齢者の栄養を補おう
高齢者はさまざまな理由から、体に必要なカロリーが摂取できなくなってしまうことがあります。そのため、食べやすさなどを考慮するだけでなく、日々の食事で高カロリーなレシピを取り入れる必要があります。今回紹介したレシピを参考に、高カロリーで必要な栄養素を十分摂取できるようにしましょう。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。