健康情報
2022.05.18
青魚が発揮する栄養効果とは?DHA・EPAを積極的に摂って健康維持を目指そう
青魚に含まれる栄養とは?
青魚とは、さんまやさば、いわしのような背の青い魚を指します。青魚には健康維持に必要な栄養素が数多く含まれており、魚類の中でもトップクラスの栄養価をほこるのです。ここでは、青魚に含まれる栄養素を紹介します。
DHA・EPA
DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)は、不飽和脂肪酸という脂質の一種です。常温で固まらない性質があり、血液をサラサラにして動脈硬化を予防する効果が期待できます。そのほかにも記憶能力の向上や抗アレルギー作用もあり、健康維持に効果がある脂質です。
DHA・EPAは青魚以外にもマグロのような赤身魚にも含まれています。しかし、部位によって含有量に差があるため、効率的にDHA・EPAを摂取するならば青魚がおすすめです。
1日の目安量はなるべく摂取する
青魚のDHA・EPAは体内で合成できない必須脂肪酸なので、1日の目安量はなるべく摂取することが大切です。DHA・EPAの1日の摂取目安量(30〜49歳)は、男性が2.0g、女性が1.6gです。目安量に到達できるよう、毎日の食事に取り入れていきましょう。
出典:SUNTORY「DHA・EPAを含むn-3系脂肪酸の1日あたりの摂取目安」
たんぱく質
青魚に含まれる動物性たんぱく質は、体内で合成できない9種類の必須アミノ酸が全て含まれています。9種類の必須アミノ酸をEAA(Essential Amino Acids)と呼び、筋肉の合成をしたり分解を抑制したりする効果があるため、筋肉量の増加や維持に欠かせない栄養素です。
たんぱく質は青魚のほかにもあらゆる食品に含まれますが、全てのたんぱく質に9種類の必須アミノ酸が含まれているわけではありません。中には、必須アミノ酸の数が少なく、たんぱく質としての働きが弱い食品もあるのです。その点、青魚のたんぱく質は体内で正常な働きをするため、普段から積極的に摂取すべきといえます。
ビタミンB群
青魚はビタミンB群が多いことが特徴です。ビタミンB群は8種類で構成され、その中でも青魚はビタミンB6、B12、ナイアシンが豊富です。
ビタミンB6
たんぱく質が体内で正常な働きをするためのサポートをします。青魚にはたんぱく質とビタミンB6のどちらとも含まれているので、双方の相乗効果を生みやすいです。
ビタミンB12
ビタミンB12の作用は、造血や神経障害の予防です。不足すると悪性貧血や下肢のしびれといった症状が出る恐れがあります。植物性の食品にはほとんど含まれていませんが、青魚のような動物性の食品には豊富に含まれます。ビタミンB12は空気に触れると酸化しやすい特性があるため、青魚を冷凍・冷蔵保存する際はしっかりと密閉することが大切です。
ビタミンD
カルシウムの吸収を促進する作用があります。体に吸収されたカルシウムは骨や歯の材料として働くため、骨軟化症や骨粗鬆症などの予防につながります。青魚は種類によっては、一尾(例:さんま)食べるだけでも1日の摂取目安量を摂取できるほどビタミンDが豊富です。また、ビタミンDは脂溶性ビタミンに分類され、油(脂)に溶けやすい性質があります。青魚のような脂質量の多い食品であれば、ビタミンDが体内に吸収されやすいのです。
セレン
ミネラルの一種で、強い抗酸化力があります。抗酸化力のある栄養素はほかにもビタミンCやEなどが挙げられますが、これらは体内に蓄積されている活性酸素を除去する働きがあることが特徴です。活性酸素は細胞を傷つけ、老化を促進する作用があるといわれています。青魚からセレンを摂取することは活性酸素を減らし、老化予防につながります。
DHA・EPAがもたらす3つの栄養効果
青魚に含まれる栄養素の中でも、DHA・EPAはとくに健康維持に役立つ効果があります。体内で合成できない必須脂肪酸でもあるので、日々の食事に取り入れることが大切です。それぞれの効果について、詳しく解説します。
心血管疾患の予防
心血管疾患とは、動脈硬化が原因で引き起こされる心筋梗塞や脳梗塞といった疾患群のことです。心血管疾患の根本原因である動脈硬化が起きると血中のコレステロールなどが血管壁にプラーク(塊)を形成し、血管の通り道を狭くしたり、血管を硬くしたりします。青魚に含まれるDHA・EPAは、血中にあるコレステロールや中性脂肪を低下させる働きがあるため、動脈硬化を防ぎ、結果的に心血管疾患を予防します。
抗アレルギー作用
DHA・EPAは、アトピー性皮膚炎や花粉症といったさまざまなアレルギーを予防する作用も確認されています。これは、DHA・EPAにアレルギーの原因物質の生成を阻害する働きがあるためです。医療機関ではアレルギー疾患のある人に、DHA・EPAが含まれたサプリメントなどを用いた栄養療法を提供しています。薬で一時的に症状を抑えるのではなく、栄養素の効果によって体の根本から治療していくことが徐々に認知され始めているのです。
学習機能の向上
DHAは、脳内の学習や記憶を司る「海馬」に多く存在しているといわれています。DHAは、脳内において情報伝達の橋渡しをするニューロンの働きをサポートするため、集中力や記憶力、判断力などを高める効果が期待できます。青魚からDHAを摂取することで、脳内のDHAの量を増やし、結果として脳機能の活性化につながるのです。DHAを摂取したことで知能指数が上がったり、認知症患者の判断力が向上したりした結果も報告されています。
DHA・EPAが豊富に含まれる青魚
ここからは、DHA・EPAが豊富に含まれる青魚を紹介します。青魚を食べる際のポイントは、脂をなるべく落とさないことです。一般的に脂っこい料理はキッチンペーパーやグリルで脂を落としますが、DHA・EPAは積極的に摂るべき脂なので、煮物や汁物、刺身のような脂を落とさない調理をしましょう。青魚は季節や品種によってDHA・EPAの含有量は異なるため、あくまで参考としてください。
さんま
さんま(100gあたり)には、DHAが1700mg、EPAが890mg含まれています。青魚の中でもカロリーは高いですが、その分DHAとEPAが豊富に含まれていることが特徴です。DHA・EPAをより多く摂取するのであれば、秋に収獲されるさんまが狙い目です。
出典:カロリーSlism「さんま」
さば
さば(100gあたり)には、DHAが700mg、EPAが500mg含まれています。さんまと同様カロリーは高いですが、DHAとEPAの含有量は青魚の中でもトップクラスです。さばの缶詰にはさばの脂が凝縮されており、手軽にDHA・EPAを摂取できます。また、コンビニでもさばの塩焼きが売られているので手に入れやすく、青魚の中では最もポピュラーな魚です。
出典:カロリーSlism「サバ」
マイワシ
マイワシ(100gあたり)には、DHAが1300mg、EPAが1200mg含まれています。いわしは青魚の中でも鮮度が落ちやすいので、すぐさま内臓を取り出して水洗いすることが大切です。鮮度が保たれている場合は刺身として食べることが一般的ですが、保存性の効く缶詰としても販売されています。
出典:カロリーSlism「マイワシ」
青魚を食べて健康を維持しよう
健康を維持するには、毎日の食事内容が鍵を握ります。とくに生活習慣の乱れから起きる動脈硬化は、栄養バランスのとれた食事を習慣化するだけでも予防できます。青魚には人間にとって必要な栄養素が数多く含まれているため、これを機に毎日の食事に青魚を取り入れて健康維持を目指しましょう。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。