2022.02.09
簡単に調理できる介護食のレシピ8選。おすすめメニューや食材を徹底解説
介護食とは
そもそも介護食とは、どのような食事なのでしょうか。
介護食は食べる機能が低下した人に配慮した食事
加齢や病気などで食べ物を噛む力や飲み込む力が低下し、スムーズに食事が進められなくなってしまうことがあります。介護食は食べる機能が低下してしまった人でも、美味しく安全に食べられることを目的とした食事であるといえるでしょう。
食材の固さに配慮したり、飲み込みやすいようにトロミをつけたりなどの工夫が必要です。
介護食=高齢者の食事?
介護食といえば、高齢者向けの食事というイメージがあるかもしれません。しかし、高齢になっても食べる機能を維持し、普通の食事を取れる人も多くいます。そのため、「介護食=高齢者の食事」ではないといえるでしょう。
ただし、気付かないうちに噛む力や飲み込む力が弱くなっていたり、加齢に伴って食欲が低下したりします。その場合、食材を小さめにカットしたり彩りや味付けの工夫をしたりすることが必要になるでしょう。
介護食の役割
食べる能力に合った介護食の提供は栄養状態の維持だけでなく、食べる楽しみから生きがいを感じられます。食べることを止めてしまうと、消化管の機能が低下します。栄養素の消化吸収がうまくいかなくなるため、栄養状態が低下してしまうのです。
また、食べることは腸管の免疫機能の維持につながり、感染症や合併症の重症化リスクを低下させる可能性もあるといわれています。
出典:厚生労働省「介護予防マニュアル(改訂版)第4章 栄養改善マニュアル 資料4-1 高齢者にとっての「食べること」の意義」
介護食の種類
介護食には食べる機能に応じて種類があります。しかし、この種類を聞いただけでどの程度のやわらかさなのかなどについて、すぐに理解することは難しいでしょう。そこで、この介護食の種類を知るための指標となるのが「介護食の区分」です。この区分を知ることで、自宅で介護食のレシピを考えたり介護食用の食事を購入したりする際の参考となります。
介護食の区分の代表的なものには、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」、日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード」、農林水産省の「スマイルケア食」などがあります。これらの区分をもとに、介護食の主な種類について分かりやすく紹介します。
出典:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類 2021」
出典:農林水産省「スマイルケア食(新しい介護食品)」
やわらか食・軟菜食
食材の形はありますが、歯茎や舌でつぶせるくらいのやわらかさで調理した食事です。噛む力の低下や、飲み込みの低下にもやや配慮しています。飲み込みやすいよう粘りが少なく、ばらつかないようにする必要があります。箸で切れるくらいのやわらかさが目安です。
ムース食
やわらかく調理したものをペースト状にし、トロミ剤などを使って成形したものです。普通の食事のような形に整えられるため、食欲を損なわずに食べられるというメリットがあります。
ゼリー食
やわらかく調理したものをミキサーなどでペースト状にし、ゼラチンや寒天、でんぷんなどでゼリー状に固めたものです。噛まずに食べられてのど越しもよいため、噛む力・飲み込む力が弱まってしまった人に適しています。ゼリー食であれば、食べる機能の状態に合わせて固さを調整することが可能です。
ミキサー食・ペースト食
噛まなくてよい食事の形態です。食べる機能によって粒のないなめらかな状態にしたり、やわらかい粒を残したりといった調整を行います。口の中でべたつかずまとまりやすい状態に調整しますが、あまりサラサラしすぎると誤嚥の可能性があるため注意が必要です。
誤嚥とは
食べ物や飲み物、唾液などを飲み込んだときに、気管に入ってしまうことです。健康な人は「むせる」ことで気管に入ったものを出せます。しかし、飲み込む力が低下した人はむせられずに、肺炎を引き起こすことがあります。
介護食の作り方のポイント
ここからは、介護食のメニューを作る際に知っておきたいことや、食材選び・作り方のポイントなどについて解説していきます。レシピを考える際の参考にしてみてください。
主食に配慮
介護食でワンパターンなメニューになりやすいのが、「主食」です。介護食の主食がお粥ばかりでは飽きてしまうため、パンや麺といったレシピのレパートリーを増やすとよいでしょう。
ご飯などの穀類は、炭水化物主体の栄養を持ちエネルギー源となります。そのため、ローテーションを組むなどして飽きないようなメニュー作りを意識してみましょう。
味付けに配慮
加齢にともない血圧が上昇する人は多いため、基本的に塩分は控えましょう。しかし、必要以上にうす味にしてしまうと味が感じられず、食欲まで失われてしまう可能性があります。
塩分の摂り過ぎに気を配りつつ美味しく食べてもらうには、食べる人の好みを考慮したレシピを考えて適宜調整しましょう。メインの料理にはしっかりと味をつけ、副菜などは以下のような減塩の工夫をしてみるのがおすすめです。
- かつおぶしや昆布などの旨味を活かす
- 酢やレモンなどの酸味を適度に使用する
- 香辛料や香味野菜の風味を活かす食材選びと調理の工夫
食材選びと調理の工夫
介護食のレシピを考えるにあたり、適したものや避けたい食材、調理のポイントなどを知っておきましょう。
適した食材
やわらかく、スムーズに飲み込める食材が適しています。
食品 | 適した部位や調理方法など |
肉類 | ロース・バラなど適度に脂のある薄切り肉 |
魚類 | まぐろ、ブリ、銀鮭、カラスガレイなど脂の乗った魚、ネギトロ |
卵・大豆製品 | スクランブルエッグ、卵豆腐、絹ごし豆腐など |
野菜類 | 葉野菜の葉先の部分(状況により細かく刻んでトロミをつける)、皮を剥いたトマトやナス |
芋類 | 煮物(煮汁でしっとりさせる)、マヨネーズ和えなど |
避けたい食材
固いものや水分の少ないボソボソ(パサパサ)したもの、喉に張り付くもの、噛み切れないものは適していない食品です。以下の食品は基本的には避けたい食材ですが、調理方法によっては食べやすくなる場合もあります。
- 海藻
- きのこ
- 生野菜
- イカ
- タコ
- ウエハース など
レトルト製品や宅配食を参考にするのもおすすめ
市販の介護食品や宅配食などを利用してみるのもおすすめです。味付けややわらかさなどが参考になるため、介護食のレシピを考えるのが楽になります。また、好みの味のレトルト製品や宅配食が見つかれば、今後の介護食作りに活かせるでしょう。
簡単に調理できる介護食レシピを紹介
ここからは、簡単に作れる介護食のレシピを紹介します。主食・主菜・副菜それぞれのレシピを紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。飲み込みの状況に応じて、トロミ剤などでトロミをつけて提供しましょう。
ご飯もののレシピ
まずは、栄養たっぷりのご飯もののレシピを紹介します。
ツナごぼうの炊き込みご飯
ご飯だけでもたんぱく質と食物繊維が摂れる、炊き込みご飯のレシピです。
材料:米、ツナ缶(水煮)、にんじん、ごぼう
固いごぼうも小さめに切ると、食べやすいです。汁ごと使うツナ缶は旨味たっぷりなので、塩味を少し足すだけで美味しく仕上げられます。
鶏ひき肉で作る野菜たっぷり親子丼
作り方がとても簡単な親子丼のレシピです。
材料:鶏ひき肉、卵、玉ねぎなどの野菜
介護食向けに野菜は細かくカットし、ひき肉を使います。最後に卵でとじ、適宜トロミをつけましょう。
丼ものは、忙しいときにとても重宝するレシピです。お粥に乗せても美味しく食べられます。
ご飯もの以外のレシピ
「たまにはパンや麺が食べたい」という人におすすめのレシピを紹介します。
レンジで簡単パン粥
「朝食はパン派」という人向けのレシピです。
材料:パン、牛乳または調整豆乳、お好みで砂糖など
- パンを細かくちぎって牛乳に浸し、レンジで加熱します。
- 飲み込みの状況に応じて、さらにパンをつぶしたりミキサーにかけたりしましょう。
- お好みで砂糖やはちみつを加えたり調整豆乳に変えてみたりしてください。
けんちんうどん
肉や野菜など具だくさんのけんちんうどんは、寒い時期にぴったりのレシピです。
材料:うどん、ひき肉(鶏・豚など)、大根、にんじん、里芋など
- うどんと具材を一緒に煮込みます。
- やわらかくなったらつゆにトロミをつけて完成です。
食べる機能に合わせ、うどんを短くカットするのがポイントになります。
主菜のレシピ
メインのおかずになるレシピを紹介します。
あんかけ和風豆腐ハンバーグ
ふわっとした食感と生姜の風味が香る、和風豆腐ハンバーグのレシピを紹介します。醤油ベースのあんがよく合い、味・食べやすさともにおすすめの料理です。
材料:ひき肉(鶏、豚など)、木綿豆腐、卵、パン粉、玉ねぎ(みじん切りにして加熱し冷ましておいたもの)、おろし生姜など
- ひき肉などの材料を全て混ぜ合わせたら、成形して焼きましょう。
- しょうゆ・みりん・だし汁を鍋に入れ、ひと煮立ちさせたら片栗粉でトロミをつけ、あんを作りましょう。
- ハンバーグにあんをかけたら完成です。
卵とトマトの中華炒め
トマトの酸味とごま油の風味が食欲をそそる中華炒めのレシピです。丼にしても美味しい中華メニューを、ぜひ試してみてください。
材料:トマト(湯むき)、卵、鶏がらスープの素、ごま油
- 湯むきしたトマトを食べやすい大きさにカットし、炒めます。
- 鶏がらスープと塩で味を調えた卵を投入し、ふんわりと仕上げて完成です。
副菜のレシピ
ビタミンやミネラルもしっかりと摂取できる、野菜のレシピを紹介します。
かぼちゃサラダ
マヨネーズで和えたかぼちゃサラダはまとまりやすく、介護食としてもおすすめのレシピです。
材料:茹で(蒸し)かぼちゃ、玉ねぎ(みじん切りにして加熱)、マヨネーズ
- 茹で(蒸し)かぼちゃをマッシュします。
- マッシュしたかぼちゃに玉ねぎを混ぜます。
- 粗熱が取れたら、マヨネーズを和えて完成です。
冷凍かぼちゃを使うと、より簡単に作れます。お好みで、刻んだゆで卵やハムなどを混ぜ込んでもよいでしょう。
かぶのポタージュ
「食事には汁ものが欲しい」という人におすすめのレシピです。トロミの強さにより、幅広い区分に活用できます。
材料:かぶ、玉ねぎ、バター、コーンクリーム缶(粒のないもの)、コンソメ
- バターで炒めたかぶと玉ねぎに水・コンソメを加えてやわらかくなるまで煮込みます。
- 粗熱を取りミキサーにかけたら鍋に戻し、クリームコーン缶を加え、コンソメなどで味を調えましょう。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。