食事療法
2022.03.24
塩分が足りないと人体に影響はある?不足しないように摂取量を把握して適切に補給しよう
塩分の働き
近年では減塩が体によいといわれていますが、必ずしもそうだとは限りません。塩分は人間の体に必要な栄養素の1つで、体のいろいろな働きになくてはならないものです。まずは、塩分の働きについて解説します。
血圧を調節する
塩分には、血管の血圧を調節する働きがあります。血液の濃度や流れる量を一定にして、常に最適な血圧の状態をキープするのに必要です。適量なら問題ありませんが摂りすぎると血圧が高くなり、不足すると低くなります。塩分摂取で大切なのは、適量を守ることです。過剰な摂取も不足も体によくありません。
体内の水分バランスを整える
塩分と水分には、密接な関係があります。人間の体の大半は水分でできていますが、細胞内の水分バランスを保つために使われるのが塩分です。血液や細胞外液など、体内の水分をコントロールしています。塩分が不足すると体内の水分バランスがうまく機能しなくなり、脱水症状を引き起こしてしまいます。水分を補給するときは、塩分の補給も大切です。
血液など体液の材料になる
腸液・胆汁・すい液・消化液・血液など、体内のさまざまな体液を生成するには、塩分が必要です。不足すると、消化不良などの症状が現れます。体作りの材料にもなるので、塩分の不足は成長の面で見てもおすすめしません。特に成長期の子どもには塩分が必要です。体作りにはたんぱく質が重要ですが、同時にそれを補助する塩分も摂取しなければなりません。
1日の塩分摂取量の目安
年齢別で1日に必要な塩分量の目安を見てみましょう。
年齢 | 男性 | 女性 |
1〜2歳 | 3.0g未満 | 3.0g未満 |
3〜5歳 | 3.5g未満 | 3.5g未満 |
6〜7歳 | 4.5g未満 | 4.5g未満 |
8〜9歳 | 5.0g未満 | 5.0g未満 |
10〜11歳 | 6.0g未満 | 6.0g未満 |
12〜15歳 | 7.0g未満 | 6.5g未満 |
16〜17歳 | 7.5g未満 | 6.5g未満 |
18歳〜 | 7.5g未満 | 6.5g未満 |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
現代人は、塩分を摂りすぎているといわれています。厚生労働省による「令和元年度の国民健康・栄養調査」によると、1日の食塩の摂取平均量は男性で10.9g、女性は9.3gです。目標量よりも少し多めに塩分を摂っていることがわかります。現代の食生活では、塩分が不足するケースは少ないようです。
摂取量を過度に気にする必要はない
塩分の摂取量の目安には、科学的根拠が存在しません。あくまでも、目安程度に捉えておいたほうが無難です。現代人のほとんどはこの目安をオーバーしていますが、運動の有無や体質などによって必要な塩分量は変わります。
ただ、目安量よりも不足する場合は注意が必要です。低血圧による立ちくらみや脱水症状などが、不足によって起こる可能性があります。食が細い人や減塩の方法を間違えた人に多く見られるので、不足しないよう毎食きっちり食べるようにしましょう。
塩分が不足するとどうなる?
塩分が不足すると、脱水症状になったりけん怠感が起きたりします。塩分は体にとって大事な栄養素なので、不足するほうにも問題が多いです。この章では、塩分が不足するとどんな問題があるのかを解説します。
脱水症や熱中症になりやすくなる
塩分が不足すると、水分をいくら補給しても脱水症状になってしまいます。塩分が不足して体内の塩分濃度が下がると、元に戻そうと水分量を減らします。どれだけ水分を補給しても塩分濃度に変化はないので、脱水症状になってしまうのです。
スポーツドリンクや経口補水液に塩分が含まれているのは、運動で汗をかいて減った塩分を補給するためです。失った塩分を補給することで、水分も体内に蓄えられます。運動時は水分だけを補給するのではなく、適量の塩分もしっかり摂取しないと危険です。
けん怠感や疲労感、筋肉痛が起こりやすくなる
塩分が不足すると体全体の回復スピードが落ちるので、いつもなら平気な運動でも筋肉痛になってしまいます。また、疲労が治るスピードも落ちるので、いつまでたっても体の調子が元に戻りません。
頭痛やめまい、立ちくらみが起こりやすくなる
塩分が不足すると異常に血圧が低くなり、血流が悪くなります。その結果、脳に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、頭痛や立ちくらみが起こるのです。ひどい場合は失神・こん睡状態に陥ることもあり得ます。高血圧は体によくないといわれていますが、異常な低血圧も同じくらい危険です。
健康のために知っておきたい、運動・塩分・水分の関係
健康でいるためには、塩分と上手に付き合っていかなければなりません。塩分の不足は万病の素なので、ある程度は必ず摂取することが大切です。また、塩分の摂取は運動と水分とも深い関わりがあります。食事の塩分摂取にばかり目がいきがちですが、減塩する場合はこの2点にも注目しましょう。
1時間以上の運動は、塩分と水分を同時に補給しよう
長時間の運動は発汗の量が多く、汗と共に大量の塩分と水分が体内から失われます。そこで重要なのが水分補給ですが、水分だけを補給しても意味がありません。水分と同時に塩分の補給も行って、初めて体が水分を吸収します。目安は、水分に対して濃度0.1〜0.2%の塩分がよいとされています。
減塩中やダイエット中だとお茶や水だけで済ます人も多いですが、長時間運動する前提であればあまりよくありません。塩分が不足して脱水症状を引き起こしたり、血圧の低下による疲労を感じたりするからです。結果としてバテやすくなり、運動どころではなくなってしまいます。運動時は、いつもより塩分やカロリーの許容量を大目に見てあげるようにしましょう。
軽い運動なら水分だけの補給でOK
1時間以内の軽い運動の場合は、塩分の補給はあまり必要ないでしょう。そもそも発汗する量が少ないので、塩分自体が不足しません。短時間のウォーキングや筋トレなど、運動時間の短いときは水分の補給だけで十分です。
ナトリウム(塩分)以外のミネラルも補給しよう
塩分(ナトリウム)と水分以外のミネラル・ビタミン類も一緒に摂ると、効果的です。運動時は筋肉の動きや負担が増え、血流も普段より早くなるので普段よりもたくさんの栄養を必要とします。ダメージを負った筋肉や活発に活動した臓器を回復させるためには、たくさんの栄養と酸素が必要です。
上手に減塩する方法
下手な減塩は塩分を不足させてしまい、体の不調の元になります。減塩するときは上手な方法で減塩しましょう。適切な塩分量には個人差があります。運動時間や体質などによって必要な量が大きく変動するので、体調を見ながら少しずつ試してみるのがおすすめです。
調味料の成分量を把握する
食材にも多少の塩分は含まれていますが、とりわけ1番多く含まれるのは調味料です。調味料を選ぶときは、パッケージやボトルの裏面にある成分表をよく見るようにしましょう。大抵の場合、塩分量が記載されています。減塩する場合は調味料の塩分量を確認して、料理に使うとどれくらいの塩分が入るかを把握しましょう。
運動の有無に応じて摂取量を調整する
毎日運動する人もいれば、たまにしか運動しない人もいることでしょう。運動による発汗は、塩分と水分を排出します。毎日決まった塩分量を守るのではなく、運動した日は多めに摂るなどしてバランスを取らなければなりません。運動時の途中でこまめな水分補給を行うのも大切です。
また、真夏は運動をしなくてもたくさん汗をかき、塩分が不足します。夏の時期は、塩分の摂取量の基準を少しゆるくしましょう。もし減塩中に立ちくらみやめまいなどの症状が頻発する場合は、今の方法が体に合っていないのかもしれません。摂取量を少し増やすなど、工夫しましょう。
トマトやお酢などの酸味のある食品を使う
高塩分の食事に慣れてしまうと、塩味の不足した食事をおいしく感じないことも多いです。そこで便利なのがお酢やトマト、レモンなど酸味のある食品です。酸味は塩味の代わりになる力を持っていて、不足した塩気を補ってくれます。また、お酢に含まれる酢酸には血圧を下げる効能があるため、高血圧予防にもうってつけです。
塩分は過不足なく摂取しよう!
人間は、塩分によって健康を保っているといっても過言ではありません。しかし、塩分は摂取バランスを取るのが難しい栄養素でもあります。運動の有無や体質によって必要な量が変わります。過剰な摂取や極端な減塩はせず、適切な量を摂取するようにしましょう。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。