人工甘味料のエリスリトールに危険性はある?気になる特徴や安全性について解説 - 健康管理食ジョイント

食事療法

2022.03.30

人工甘味料のエリスリトールに危険性はある?気になる特徴や安全性について解説

人工甘味料のエリスリトールに危険性はある?気になる特徴や安全性について解説
馬塲 耕造
監修

馬塲 耕造

エリスリトールは甘味料の一種です。天然の素材から作られることや、カロリーゼロであるなど安心できる点もありますが、デメリットや危険性はあるのでしょうか。この記事では、エリスリトールとはどんな甘味料なのか、その特徴や安全性について解説します。
もくじ

エリスリトールとは

エリスリトールとはどのような成分なのでしょうか。

エリスリトールは発酵食品などに含まれる糖アルコールの一種

「糖アルコール」と呼ばれる糖質の一種がエリスリトールです。エリスリトールは、果実類やきのこ類などの食品のほか、ワインや日本酒、しょうゆ、みそなどの発酵食品に含まれています。甘味料としてのエリスリトールは、ブドウ糖を酵母で発酵させることで生成されています。

エリスリトール以外の糖アルコールの原料も、麦芽糖や水飴などの糖類です。糖アルコールは、消化・吸収されにくく低カロリーであるという特徴があります。化学的に安定した糖質であるため、熱や酸、アルカリに強く、微生物が増殖しにくい素材であることから、加工食品などにも利用されている成分です。

エリスリトールは安全性の高い食品

エリスリトールは、ブドウ糖を酵母発酵させて作られる成分です。発酵食品にも含まれていることから、安全性は高いと考えられています。また、甘味料のなかには食品添加物として扱われているものもありますが、エリスリトールは食品扱いです。

エリスリトール以外の代表的な糖アルコール

エリスリトール以外にもよく知られている糖アルコールがありますので、いくつか紹介します。

キシリトール

とうもろこしの芯から作られるキシロースをもとにして作られます。ガムなどに添加されており、砂糖と同じ甘みを持ちます。カロリーは砂糖の1gあたり4kcalよりも若干低い1gあたり3kcalで、口の中でひんやりとした感覚を生じる甘味料です。

エリスリトールは食品扱いの糖アルコールですが、キシリトールは食品添加物となります。食品に対しての使用基準は設けられていません。

ソルビトール

ブドウ糖に水素が添加された糖アルコールです。天然にも存在し、りんごやプルーンなどに含まれています。ソルビトールのカロリーは1gあたり3kcalで、甘さは砂糖の60~70%です。酸化されにくいことや、食品の質を保つ作用が高いことなどから幅広く利用されています。ソルビトールも食品添加物にあたりますが、食品への使用基準は定められていません。

マンニトール

ショ糖(砂糖)に水素を添加して作られるのが、マンニトールです。乾燥した海藻や干し柿、きのこなどの天然の食品中に存在しています。甘さは砂糖の55~70%で、カロリーは1gあたり3kcalです。食品添加物として飴類やチューインガム、昆布の佃煮など使用用途が限られており、食品ごとに使用基準が定められています。

還元水飴

でんぷんを酵素で加水分解することによって得られる水飴に、水素を添加にして作られるのが還元水飴です。「還元澱粉(でんぷん)加水分解物」「還元澱粉糖化物」「還元オリゴ糖」などと呼ばれることもあります。分解の過程で、粘度や甘味度の異なる種類の製品が多く作られるため、用途が幅広いのが特徴です。

甘さは砂糖の10~60%と製品によって異なり、カロリーは1gあたり2kcalです。

出典:独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」

エリスリトールは人工甘味料なのか

エリスリトールは糖アルコールという成分の一種です。甘味料として用いられていますが、甘味料にもいろいろな種類があります。ここではエリスリトールの甘味料としての特徴などについて見ていきましょう。

人工甘味料とは?

甘味料は、「糖質系甘味料」と「非糖質系甘味料」の2種類に分類されます。そして、化学的に合成された甘味料が人工甘味料です。以下の表では甘味料の種類を紹介します。

糖質系甘味料 砂糖
でんぷん由来の糖 ブドウ糖、果糖、水飴、イソマルトオリゴ糖など
その他の糖 フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など
糖アルコール エリスリトール、キシリトール、ソルビトールなど
非糖質系甘味料 天然甘味料 ステビア、甘草(グリチルリチン)など
合成甘味料 アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなど

出典:独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」

エリスリトールは天然素材から作られる甘味料

「人工甘味料」という言葉自体は、一般的には化学反応によって作り出された化合物、つまり合成甘味料に対して使われています。

人工甘味料には天然の素材から人工的に作られる甘味料を含む場合があり、明確な定義がないのが現状です。エリスリトールをはじめとした糖アルコールは天然素材から人工的に作られた甘味料であるといえます。

出典:消費者庁「参考資料3 上田委員提出資料」

エリスリトールの特徴

糖アルコールであるエリスリトールには、どのような特徴があるのか見ていきましょう。

エリスリトールは砂糖より甘みが少ない

エリスリトールの甘さは、砂糖の75%程度です。そのため、砂糖と同じ甘さにするにはより多くの量を使う必要があります。

出典:独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖以外の甘味料について」

エリスリトールは血糖値を上げない

砂糖の代わりにエリスリトールを用いることで、血糖値の上昇が抑えられることが知られています。

エリスリトールは小腸で吸収され血液中に入りますが、利用されずに大半が尿中に排出されます。そのため、エリスリトールを含む食べ物を食べたあとでも血糖値が大きく変動することはなく、インスリンの分泌にも影響を与えません。このことから、糖尿病の食事療法に用いられることもあります。

エリスリトールのカロリーはゼロ

エリスリトールは、糖アルコールのなかでも唯一カロリーゼロと表示できる甘味料です。厳密には100gあたり0.24kcalですが、これは「0kcal」であると表示して良い範囲の数値です。糖アルコールの多くは、カロリーが1gあたり2~3kcalあります。カロリーゼロのエリスリトールは、ダイエットの味方となってくれるでしょう。

栄養表示基準に基づいたカロリー表示

100ml(g)あたりのカロリーが5kcal未満の場合は「カロリーゼロ」と表示できます。「ノンカロリー」や「カロリーなし」と表示することも可能です。また、「低カロリー」や「カロリー控えめ」などの低い旨の表示をする場合は、100gあたり40kcal(液状の飲み物については100mlあたり20kcal)が基準となります。

出典:東京都保健福祉局「栄養成分表示ハンドブック」

エリスリトールは口内環境を良好に保つ

エリスリトールはお口の健康を保つことにも役立ちます。

むし歯の原因にならない

エリスリトールは、むし歯の原因となるミュータンス菌(むし歯菌)などの細菌の影響を受けない食品です。

むし歯の原因となるのは、繁殖した細菌の塊である「プラーク(歯垢)」とミュータンス菌などの細菌が作り出す「酸」です。細菌は、プラーク内の糖質を栄養源として酸を作り、その酸が原因となりむし歯ができます。砂糖はプラークの形成と酸の発生を促進する作用が高いため、むし歯の原因となりやすい食品です。しかし、エリスリトールをはじめとした糖アルコールにはこのような作用がないため、むし歯の原因とはなりません。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「プラーク/歯垢」

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「う蝕の原因とならない代用甘味料の利用法」

口臭予防に役立つ

むし歯や舌苔(ぜったい)は口臭の原因となります。舌苔とは、舌に付着する白い苔(こけ)のようなもので、プラークと同様細菌の塊です。エリスリトールを摂取してもむし歯や舌苔が作られにくいため、口臭予防にも役立つと考えられます。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」

エリスリトールは下痢を起こしにくい

糖アルコールを摂取するとおなかが緩くなることがありますが、エリスリトールはこの作用を起こしにくいといわれています。

体質によっては症状が起きる可能性がありますが、症状自体は一時的なものであるため心配はありません。

エリスリトールによる副作用の危険性やデメリット

エリスリトールはカロリーゼロであることや血糖値に影響しないことなど、私たちにとってうれしいメリットがあります。安全性も高い成分ですが、デメリットや副作用を引き起こす危険性など、注意すべきことはあるのでしょうか。

ここでは、エリスリトールのデメリットや副作用の危険性などについて解説します。

摂り過ぎると副作用の危険性もある

エリスリトールは、大量に摂取すると副作用を引き起こす危険性があります。

下痢を引き起こす危険性がある

他の糖アルコールと比べるとおなかが緩くなる作用は弱いですが、大量に摂取した場合は、その危険性が高まります。

エリスリトールは食品であり安全性の高いものであるため、許容一日摂取量(ADI)は設けられていません。しかし、一度に摂取した場合の最大無作用量は、成人男性で0.66g/kg体重、成人女性で0.80g/kg体重と報告されています。例えば、体重60kgの男性、体重50kgの女性であれば40g程度が一度に摂取する量の上限です。下痢を起こさないためにはこの量を目安に、摂り過ぎないように注意しましょう。

出典:東京都福祉保健局「平成26年度 収集情報」

アレルギーを引き起こす危険性がある

頻度は多くありませんが、エリスリトールを摂取することでアレルギーを引き起こすことが報告されています。アレルギーが起こるメカニズムについては、明らかになっていません。そのため、エリスリトールを摂取してアレルギー症状が現れた場合は、摂取を中止して受診するようにしましょう。

出典:東京都福祉保健局「東京都食品安全FAQ」

料理に向き不向きがある

カロリーゼロであることや血糖値が上昇しないことから、エリスリトールを砂糖の代わりに料理に使用したいと考える場合もあるでしょう。しかし、エリスリトールは、その特性や後味などから向かない料理があります。

エリスリトールに向かない料理

エリスリトールをケーキや焼き菓子に使用した場合、きれいに膨らみません。また、黒豆などの煮豆を作る場合もふっくらと仕上がらない場合があります。その場合は、砂糖と混ぜて使用したりベーキングパウダーを使ったりすると上手くできます。

エリスリトール向けの料理

エリスリトールはひんやりとした後味があるため、冷やして食べるスイーツなどに向いています。ヨーグルトに甘味をつけるのにも適しているでしょう。煮物や炒め物などに使っても美味しく仕上がりますが、後味が気になるという人もいるようです。

砂糖より値段が高め

砂糖は1kgあたり200円前後で購入できますが、エリスリトールは砂糖の5倍ほどの値段が相場です。カロリーや血糖値に対するメリットを取るか、値段を取るかで悩んでしまいそうですが、健康のためであれば購入する価値はあるのかもしれません。使い過ぎないようにすることも、エリスリトールを上手に活用するポイントとなりそうです。

エリスリトールは摂り過ぎなければ危険性の低い甘味料

エリスリトールは、ブドウ糖を酵母発酵させて作られる糖アルコールの一種です。カロリーゼロであることなど多くのメリットがありますが、デメリットもあるため摂り過ぎないよう注意しましょう。危険性の低い甘味料であるといえるため、上手に活用して健康に役立ててみてください。

普段の食生活を見直してみませんか?

普段から食生活について考えている方、あまり考えていない方。

どこに重きを置くかは、人それぞれだと思います。

良くも悪くも自分の食生活を見直すきっかけとして、ジョイントの食事をお試しください。

馬塲 耕造
監修株式会社ジョイント
監修馬塲 耕造

管理栄養士馬塲 耕造

1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。