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2021.12.16
【介護者向け】高齢者の介護で気をつけたい食事の基本とは。調理時のポイントを解説
- もくじ
介護が必要な高齢者の食事の特徴
高齢になるにつれて歯の本数が減ったり筋力が低下したりすることで、食べ物を噛む力が弱くなっていきます。そのため、硬いものや繊維質のものが食べにくくなってしまうのです。
一人暮らしの高齢者や交流の少ない方は会話の機会も少なく、あごの筋肉が衰えてしまうことも原因になるといわれています。
介護の食事では、噛む力が弱くても食べられるような工夫が必要です。
噛む力が弱くなる
高齢になるにつれて歯の本数が減ったり筋力が低下したりすることで、食べ物を噛む力が弱くなっていきます。そのため、硬いものや繊維質のものが食べにくくなってしまうのです。
一人暮らしの高齢者や交流の少ない方は会話の機会も少なく、あごの筋肉が衰えてしまうことも原因になるといわれています。
介護の食事では、噛む力が弱くても食べられるような工夫が必要です。
飲み込む力が弱くなる
高齢になると、唾液の分泌量が減ってくるという特徴があります。唾液が減ると口の中で食事を上手くまとめられなくなり、飲み込みにくくなってしまうのです。また飲み込む力自体も弱くなり、食べ物が食道ではなく気管に入るという誤嚥を起こしやすい点も、注意するポイントとなります。
介護の食事では、高齢者が飲み込みやすいような調理法にも注目しましょう。
味覚の機能が鈍くなる
食事の味は、舌や口の中にある「味蕾」という部分で感じます。高齢者になると、この味蕾の数が減って味覚が鈍くなってきます。味覚の機能が鈍くなると、今までの食事では「味が薄い」「味がしない」と感じてしまう場合もあるのです。介護が必要な高齢者は、「味が薄い=美味しくない」と感じると食欲がなくなり、食事の量が減る傾向にあります。
介護が必要な高齢者に食べやすい食事形態
介護が必要な高齢者の特徴を踏まえて、介護の食事に合う食材や調理法を解説します。介護しやすく、高齢者に安心して食べてもらえる通常の食事づくりのポイントを押さえておきましょう。
高齢者が食べやすい食材を選ぶ
介護の食事では、噛む力や飲み込む力が低下してしまった高齢者が安心して食べられる食材を選ぶことが大切です。噛みやすく飲み込みやすいものや食べにくい食材がどんなものかを知っておくと、介護の食事を作る際に参考になるでしょう。
食べやすい食材の例
介護の食事は、噛みやすく飲み込みやすい状態に調理することが大切です。トロッとやわらかい料理は、高齢者の方も安心して食べやすいです。実際にはどんな料理が食べやすいとされているか、下の表で確認してみましょう。
食材の状態 | 食材・調理例 |
おかゆ状 | おかゆ、パンがゆ |
プリン状 | プリン、卵豆腐 |
乳化されたもの | ヨーグルト、アイスクリーム |
ゼリー状 | ゼリー、煮こごり |
ポタージュ状 | ポタージュスープ、シチュー |
食べにくい食材の例
反対に高齢者が食べにくいと感じる硬いものや繊維質のもの、むせてしまうような味付けには注意しましょう。食べにくい食材は、誤嚥やのどに詰まらせてしまう場合もありますので、食べやすくなるような調理の工夫が必要となります。
食材の状態 | 食材・調理例 |
繊維が多い | ごぼう、れんこん、いかなどの魚介類 |
弾力が強い | こんにゃく、もち |
水分が少ない | せんべい、味付けのり、パン |
酸味が強い | 柑橘類、酢の物 |
口の中でまとまらない | こふき芋、そぼろ、チャーハン |
硬い生野菜 | 千切りキャベツ、レタス、きゅうり |
高齢者がスムーズに食べられるように調理法を工夫する
介護の食事では、食べやすい食材ばかり選ぶと栄養が偏ってしまう場合があります。食べにくい食材にも、介護の必要な方にとって必要な栄養素を多く含むものもたくさんあります。そこで高齢者が食べにくい食材も美味しくスムーズに食べてもらうために、調理方法を工夫することが重要です。
どんなふうに調理すれば安心して食べられるか、具体的な方法を知っておくと安心です。
野菜は繊維を断ち切る
野菜は、繊維を断ち切る方向で切るのがポイントです。縦に繊維がある葉物は、横に包丁を入れましょう。硬さのある野菜は隠し包丁を入れておくと、食べやすくなります。介護の食事では、野菜や果物をすりおろして繊維を細かく断ち切るとスムーズに食べやすくなります。どうしても食べにくい食材は、すりおろすのもよいでしょう。
肉や魚は筋切りする
介護食で使う肉や魚は、噛み切りやすいように筋切りしておきましょう。特に肉の硬い部分は、噛む力が弱い高齢者にとっては、噛みにくく飲み込みにくい食材です。筋切りをするだけでなく、小さく切ったり細長く切ったりと切り方を工夫するのもおすすめです。
肉は柔らかくなるようじっくり煮込み、魚は加熱し過ぎて硬くならないようにするなど、調理法にも注意しましょう。介護者の方も安心して食べさせられます。
とろみをつけてのど越しをよくする
食材に片栗粉やコーンスターチ、介護食用のとろみ剤を使って、トロッとした食感に調整すると介護の必要な方でも飲み込みやすいです。特にパサつきがちな芋類や、口の中でバラバラになるひじきやかまぼこなどは、とろみをつけることで食べやすくなります。
野菜や豆類は煮崩れするまで柔らかく煮込んだり、ミキサーで混ぜてスープのようにとろみをつけたりする方法もあります。
介護の食事に必要な栄養の種類と機能とは
介護の食事では、栄養バランスのよい献立を考えることも大切です。身体を作るのは食べ物から、というように介護の食事でも栄養面を意識した献立をたてましょう。ここでは、積極的に摂取したい基本の栄養素や機能と、摂りすぎに注意したい栄養素について解説します。
積極的に摂りたい栄養素
高齢者の食事は、食べられる量が少ないからと簡単な食事で済ませてしまう場合があるかもしれません。しかし食べられないからといって、いつも簡単な食事を摂っていると必要な栄養が不足して身体の機能が低下する恐れがあります。特に高齢者の健康のために必要な栄養素はどんなものがあるのか、献立を考えるときに意識しておきましょう。
たんぱく質
たんぱく質は三大栄養素の一つであり、血液や筋肉などからだを作るうえで重要な成分です。エネルギー源として使われることもあり、介護が必要な高齢者の健康を維持するうえでとても大切な栄養素といえます。
たんぱく質は、肉や魚、卵や大豆などに多く含まれますが、介護が必要な高齢者にとって食べにくい食材がたんぱく質を多く含む食材です。
調理方法を工夫して、たんぱく質を含む食材を積極的に摂取していきましょう。
カルシウム
カルシウムは、からだの中に多く含まれるミネラル分で骨や歯を形成する大切な成分です。カルシウムが不足すると骨粗しょう症になりやすく、また寝たきりの原因にもなる骨折もしやすくなるなどの特性もあります。介護の食事では、特に意識しておきたい栄養素の一つといえます。
カルシウムは通常乳製品に多く含まれているため、食事やおやつを上手く活用して乳製品を積極的に取り入れるとよいでしょう。
摂りすぎ注意な栄養素
高齢者の食事では、摂りすぎに注意したい栄養素もあります。同じようなメニューが続いたり、濃い味付けを好んだりすることで栄養が偏ってしまう場合があるからです。必要な栄養をしっかり摂るだけでなく、摂りすぎに注意したい栄養についてもチェックしておきましょう。
塩分
介護の食事では、特に塩分の摂りすぎに注意が必要です。味覚が鈍くなっている高齢者は、濃い味付けを好み塩分を摂りすぎる傾向があります。また簡単に食事を済ませるためにインスタント食品を多く活用すると、塩分を摂りすぎてしまう場合もあります。
塩分の摂りすぎは、高血圧や動脈硬化をひきおこしたり、腎臓病につながる恐れがあったりします。そのため、介護の食事では特に「塩分の摂取量に気をつけること」と覚えておきましょう。
塩分を控える工夫
食事の味付けが物足りないと感じさせないため、お出汁を濃いめにとったり、生姜のような風味の強い食材をプラスしたりと、調理を工夫する方法があります。安易に塩やしょうゆをプラスするのではなく、風味を加えることで満足感を感じられるよう工夫するとよいでしょう。
介護のお食事でお困りの方には…ジョイントの御膳がおすすめです!
介護の必要な高齢者の食事は、メニューが偏りがちな傾向にあります。同じものを繰り返し食べたり、ワンパターンな献立になったりすることで、食事に飽きて食欲が落ちてしまう場合もあります。飽きずに食欲をそそるよう、食事の形態を工夫したり種類をふやしたりする工夫も必要です。
通常の主食・主菜・副菜を毎日しっかり摂る
食事の用意が面倒になると、ご飯やパンなどの炭水化物のみの簡単な食事に偏ってしまいがちです。お肉やお魚のような主菜や、野菜や豆類、海藻などが摂れる副菜を献立に盛り込むことで、バランスよく基本の栄養素を摂取できます。
毎日の食事はできるだけ基本の主食・主菜・副菜をしっかり摂り、食材の種類を増やして多くの栄養素を摂取することを心がけましょう。
同じメニューが続かないよう工夫する
介護の食事は、「いつの間にか同じようなメニューの繰り返しになっている」ということもあります。同じメニューが続くと、飽きて食欲がなくなることにもつながります。飽きさせないためには、食事の種類を増やしたり形態を変えたりすることで、食欲を刺激しましょう。
食べる楽しさを感じるために、美味しそうな見た目や香りにもこだわって調理するのもおすすめです。
楽しく食べる環境づくりが大切!
介護の食事では、楽しく食べる環境作りがとても大切なポイントです。家族や介護施設などどんな形態であれ、だれかと食べる食事は美味しく感じるものです。食事は食べるだけでなく、おしゃべりも楽しみと感じる高齢者も多くいます。このように楽しく食べることで、食欲がわくものです。孤食は食事の偏りや食欲減退につながる可能性もあるので、できる限り楽しく食べられる環境づくりを心がけていきましょう。
高齢者の介護で大切な食事の基本を押さえよう
噛む力が弱くなってきた方などに歯ぐきでつぶせる程度の食感となっております。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。