健康情報
2022.05.17
食欲を抑制する機能「レプチン」とは?分泌ホルモンを味方にして上手にコントロールしよう
レプチンの作用とは?
私たちの食欲は、摂食を調節するホルモンによって左右されています。まずは、食欲を抑える「レプチン」というホルモンの特徴を見ていきましょう。
食欲を抑制するホルモン
満腹中枢に作用して食欲を抑制
食欲は、脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢を含む神経系にホルモンの刺激が伝わることにより、コントロールされます。レプチンは満腹中枢を刺激するホルモンで、摂食中枢を刺激するのがグレリンです。
食事を開始すると上昇した血糖値に連動して脂肪細胞からレプチンが分泌され、満腹中枢へ働きかけることにより食欲を抑えます。一方で、摂食中枢では胃から分泌されるグレリンの刺激により空腹感を引き起こし、食欲増進につながるのです。
エネルギー消費を増大させる
交感神経に作用して代謝を促進
満腹中枢と同様に、脳の視床下部を中枢として多岐にわたる重要な作用に関わるのが自律神経系です。レプチンの分泌により自律神経のうち交感神経が活性化されると、エネルギー消費が促進します。これにより余分なエネルギーの蓄積を防ぎ、体重の減少につながるのです。
脂肪細胞で脂肪燃焼を促進
体脂肪が減少する
レプチンにより刺激された交感神経で分泌されるのが、ノルアドレナリンです。ノルアドレナリンは、脂肪細胞に直接的に働きかけて中性脂肪の分解を促進し、血流に脂肪酸を放出します。やがて脂肪酸は、筋肉でのエネルギー源や熱産生の活発な脂肪細胞での燃焼などを経て、体脂肪の減少につながるのです。
レプチンの分泌機能を左右する要因
レプチンは、大量に分泌されればよいというものではありません。過剰でも不足しても、本来の生理機能を果たせない状態に陥ることもあります。ここからは、レプチンの正常な機能を妨げてしまう要因を見ていきましょう。
レプチン抵抗性は高い体脂肪が原因
体脂肪率と分泌量は比例
体脂肪率の高い人ほど血液中のレプチン濃度が高いことから、分泌量と体脂肪量は比例しています。食生活における高脂肪食や過剰なエネルギー摂取が、余剰な中性脂肪の蓄積や脂肪細胞を太らせる主な要因です。レプチンには、一定量以上に脂肪を蓄積させないよう調節する作用があるため、肥大化した脂肪細胞からは分泌がさらに増加します。
レプチン抵抗性とは
必要以上の体脂肪の蓄積により肥大した脂肪細胞は、一層分泌量を増加させます。大量のレプチン分泌が続くと受け止めるレセプターの機能が弱まり、満腹中枢への刺激に耐性が生じるのです。その結果、食欲の抑制やエネルギー消費の促進など、本来の機能を十分に果たせません。このようにレプチンが増えすぎて効かない状態が、レプチン抵抗性です。
過剰分泌は肥満につながる
レプチンは過剰に分泌すると、レプチン抵抗性の状態を引き起こします。やがてエネルギー消費も減り、食欲を抑制できず肥満につながるのです。また、肥満が解消されないため、メタボリックシンドロームのリスクが高まります。
レプチン分泌を低下させる要因
夜食の習慣
遅い時間に食事をする習慣は、レプチンの分泌を低下させます。特に睡眠直前の食事は食後体熱として代謝されるはずのエネルギー消費が減少するため、余剰脂肪を蓄積する一因です。食後の熱産生による体温上昇は満腹中枢を刺激して満腹感を起こし、食欲の抑制に役立ちます。遅い時間に夜食を食べる習慣がある場合には、注意しましょう。
睡眠不足
睡眠時間が短いとレプチンの分泌が低下するため、食欲を抑制できません。同時に、空腹感を引き起こすグレリンというホルモンの分泌量が上昇します。これにより食欲が増し、過食や脂肪の過剰な蓄積の原因となるのです。
痩せすぎ
ダイエットによる急な体脂肪の減少や痩せすぎの状態では脂肪細胞の数が少ないので、レプチンが十分に分泌されません。また、レプチンの分泌低下は甘みの感受性が上昇してより食べ物が美味しく感じられるため、リバウンドが起こりやすいのです。脂肪細胞は保温やエネルギー貯蔵、ホルモンの分泌などの役割もあるので、体脂肪は適度に保ちましょう。
レプチンを味方につける生活習慣
レプチンが本来の生理作用を発揮するためにも、体脂肪の把握やライフスタイルの見直しは重要です。ここからは、数値化された指標による肥満度のチェックや、レプチンの正常な分泌を促す生活習慣を紹介します。現状を把握して、レプチンを味方につける日常生活を送りましょう。
肥満と痩せすぎに注意
肥満の目安はBMI25kg/㎡まで
脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積された肥満状態では、レプチン抵抗性に注意が必要です。肥満度の判定には、「BMI(Body Mass Index)」と呼ばれる体格指数が指標として用いられます。日本肥満学会の定義では、BMI値25以上が肥満判定です。BMIは身長と体重から簡単に算出できるので、 以下に示す計算方法から現状の肥満度を把握してみましょう。
- BMI=体重kg/(身長m×身長m)
- (例)身長170cm、体重75kgの場合→BMI=75kg/(1.7m×1.7m)=25.95
BMIによる肥満度の判定 | |
BMI(kg/㎡) | 判定 |
<18.5 | 低体重 |
18.5≦BMI<25.0 | 普通体重 |
25.0≦BMI<30.0 | 肥満(1度) |
30.0≦BMI<35.0 | 肥満(2度) |
35.0≦BMI<40.0 | 肥満(3度) |
40≦ | 肥満(4度) |
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「肥満と健康」
出典:日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」巻頭図表【表A】
痩せてもBMIは22kg/㎡が理想
体脂肪が少なすぎる状態では脂肪組織から分泌されるレプチンの量も減ってしまうため、痩せすぎにも注意する必要があります。標準的なBMIの目安は、男女とも22kg/㎡です。この値は疾病のリスクが少ないとされ、標準体重の算出にも使われます。以下に標準体重の計算方法を示したので、参考にしましょう。
- 標準体重kg=(身長m×身長m)×22
- (例)身長160cmの標準体重=(1.6×1.6)×22=56.32kg
出典:日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」巻頭図表【表A】
食習慣の見直し
遅い時間の食事を避ける
遅い時間の食事は、レプチンの分泌が低下します。さらに満腹中枢を刺激するための体熱の産生量が不足しているので満腹感も感じにくくなり、食べ過ぎてしまうのです。また、夜食が翌朝に響いて朝食を欠食するようなことがあると、消費エネルギーが減少してしまうため注意が必要です。
高脂肪食に偏らない
脂質の高い食事のとりすぎは体脂肪を増やし、レプチンの作用不足につながります。高脂肪食の頻度を減らすことや低脂肪を心がけることも、正常なレプチン分泌には重要です。連日のように揚げ物などを食べるのは避け、蒸したり煮たりして脂肪を減らす調理法を使ったメニューと組み合わせましょう。
ゆっくり食べる
血糖値の上昇による満腹刺激は食事開始後15分ごろからはじまり、20分経過するころにはレプチンの分泌が増えてきます。食事の際には20分以上かけて、ゆっくり食べることを心がけるとよいでしょう。
食べる順番は野菜から
血糖値の急な上昇の後には急降下が起こり、空腹感も生じてしまいます。血糖値の急上昇を緩やかにするためには、野菜の摂取や食べる順番の工夫が有効です。野菜に含まれる食物繊維は、糖質の吸収を穏やかにしてくれます。メインのおかずや炭水化物を食べる前に、野菜を含んだ前菜などから手を付けるとよいでしょう。
睡眠時間の確保
睡眠不足の状態では、レプチンの分泌が低下します。その反面、食欲増進と脂肪蓄積につながるグレリンを増加させるため、十分な睡眠時間を確保しましょう。
レプチン分泌を味方にして食欲と体重をコントロールしよう!
レプチンとは、食欲の抑制やエネルギー代謝の増加により余計な脂肪が蓄積しないようコントロールするホルモンです。正常な働きには体脂肪をためすぎず、ゆっくりと食事をして睡眠時間を確保することが重要となります。BMIや標準体重なども活用しながら、レプチンを味方につけて食欲や体重をコントロールしていきましょう。
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冷凍庫から取り出して、電子レンジで温めるだけの簡単調理。
調理する時間を減らして、その分ゆったりしたお食事の時間を確保しましょう。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。