食事療法
2022.04.15
アミラーゼが高いときの症状とは?食事療法の必要性や負担をかけない食生活について
- もくじ
アミラーゼの働きとは?
アミラーゼとは、膵臓と唾液腺から分泌される消化酵素です。お米やパンなどに含まれる多糖類(でんぷん)を分解する働きがあり、消化において重要な役割を担っています。
分解されたでんぷんはエネルギーとして働く
でんぷんがアミラーゼによって分解されると、最終的に糖質の最小単位である「ブドウ糖」に変化します。ブドウ糖は、脳や筋肉を動かす際のエネルギーとして働きます。つまり、アミラーゼは糖質をエネルギーに変える過程において欠かせない消化酵素です。でんぷんは、唾液由来のアミラーゼSによって分解の第一段階を踏みます。しかし、でんぷんのほとんどは膵液由来のアミラーゼPで分解されるといわれています。
アミラーゼが高くなる主な原因
アミラーゼが高くなる主な原因は、膵臓もしくは唾液腺に異常が発生していることが考えられます。アミラーゼのP型とS型のどちらが高いのかを判断するためには、血液検査やCTなどの精密検査で調べる必要があるでしょう。
膵臓
膵炎や膵臓がんなどになると、アミラーゼが高くなる恐れがあります。とくにアミラーゼが高くなる原因として多いのが、膵炎です。膵臓が何かしらの理由でダメージを受けると膵細胞が破壊され、膵液に含まれるアミラーゼが血中や尿中に放出されます。それによって、アミラーゼが高くなるのです。
唾液腺
唾石症や耳下腺炎といった唾液腺の病気にかかると、アミラーゼが高くなることがあります。唾石症は唾液腺内に石ができる病気であり、耳下腺炎は「おたふくかぜ」のことです。どちらの病気も、腫れや激しい痛みが生じます。そのため、アミラーゼが高い状態で口や耳まわりに痛みがあるのであれば、唾液腺の異常を疑いましょう。
慢性膵炎は生命に関わる危険な病気
慢性膵炎は、膵液(消化酵素)が活性化されることによって自らの膵臓に繰り返しダメージを与える病気です。長期間この状態が続くと免疫機能が低下し、膵臓がんの死亡リスクが高まるといわれています。
慢性膵炎の主な原因
慢性膵炎の原因は、男女で異なります。男性はお酒が、女性は胆石が原因であることが多いようです。ただ、女性の慢性膵炎は原因が特定できない場合もあります。
アルコール
アルコールを過剰に摂取すると、膵液の分泌を過剰に促したり、膵液の通り道である膵管のむくみを引き起こします。これにより膵臓に膵液が残留するので、膵細胞が炎症を起こす恐れがあります。つまり、膵臓から分泌される膵液によって自らの臓器を溶かしてしまうのです。
高脂肪食
脂っこいお肉や揚げ物などの摂りすぎは、血中のコレステロールを増やして胆石をつくる原因になる可能性があります。胆石とはコレステロールなどが結晶化した石のことで、胆石が膵液の通り道である膵管を詰まらせることがあります。それによって膵臓に膵液が溜まり、炎症を引き起こすのです。
慢性膵炎の主な症状
慢性膵炎になると膵臓の働きである消化活動とホルモン分泌機能が著しく低下し、体にさまざまな症状があらわれます。
消化不良・脂肪便
膵液に含まれる消化酵素にはアミラーゼのほか、リパーゼがあります。リパーゼは食事から摂取した脂質(脂肪)を分解する働きがありますが、慢性膵炎になるとその働きが弱まるのです。そうなると、脂質がうまく代謝されないため、消化不良を起こしたり便に脂肪が混ざったりする症状があらわれます。脂質は体にとって重要な栄養素なので、体に吸収されずに排出されると低栄養状態になる恐れもあるのです。
糖尿病
膵臓は、インスリンというホルモンの分泌器官でもあります。インスリンは血糖値を下げる働きがあるため、高血糖によって引き起こされる糖尿病を予防するために重要なホルモンです。しかし、慢性膵炎になると膵臓の機能が低下するので、インスリンの分泌も制御されます。そうなると慢性的な高血糖状態になり、糖尿病へと進行する場合がほとんどです。糖尿病は毛細血管がもろくなりやすい症状で、網膜や腎臓、手足の障害につながります。
腹痛
慢性膵炎になると、食後に腹痛を感じる場合があります。その原因は、膵液に含まれる消化酵素が膵臓を溶かしたり、お腹まわりにある腹膜に炎症が広がったりするためです。慢性膵炎は慢性的な病気なので、腹痛が数年〜数十年、定期的に起こることがあります。
アミラーゼが高いときは食事療法で改善
アミラーゼが高いときは、食事療法で改善することが第一といえます。食事療法を行えば膵炎の悪化を予防し、結果的に高くなったアミラーゼの改善につながるのです。なお、すでに膵炎が悪化している場合は治療の初期段階で絶食をする必要もあるので、担当医に相談のうえ食事内容を決めましょう。
糖質とたんぱく質をメインに摂取する
1日の食事では、糖質とたんぱく質をメインに摂取するのが望ましいです。脂質を摂取することで消化酵素のリパーゼが分泌され、膵臓に負担がかかってしまいます。なるべく脂質は制限しつつ、さっぱりとした和定食をイメージするようにしてメニューを組み立てましょう。また、刺激物の摂取は消化液の分泌を促すため、控えるようにしましょう。
おすすめの食材
糖質は、お米やパン、麺のような穀類やジャガイモ、ごぼう、かぼちゃのような根菜類を取り入れます。たんぱく質は、たらや鮭、ほっけといった白身魚、甲殻類のような低脂質の食材を取り入れましょう。ただし、貝類は消化が悪いので控えましょう。なお、脂質を完全にカットしてしまうとホルモンや細胞膜の生成を妨げ、体調不良を招く恐れがあるので注意が必要です。腹痛などがない限りは、食品に含まれる脂質などの量で、1日に40〜60gほどの脂質を摂取してください。
お米はお粥がおすすめ
お粥は胃腸への負担が少ないため、慢性膵炎の食事療法として推奨されています。お湯でふやかすとお米自体が柔らかくなるだけでなく胃腸を温める効果も期待できるので、消化器官への刺激が減ります。したがって、普通にお米を食べるよりも膵炎には効果的です。
飲酒・喫煙を避ける
アミラーゼが高いのであれば、必ず飲酒や喫煙は避けましょう。膵炎になる原因の大半は、お酒に含まれるアルコールの過剰摂取によるものが多いです。アルコールは膵臓に強い刺激を与えてしまうので、禁酒をして膵炎の悪化を防がなければなりません。
また、喫煙に関しても膵炎の悪化を助長させることが明らかになっています。自分の力で禁酒や禁煙が難しければ、専門の医療機関で受診し、相談することが得策といえます。
刺激物の摂取は控える
香辛料やカフェイン、炭酸飲料などは刺激が強く、消化液の分泌を促すため摂取を控えましょう。辛い食べものは避け、ノンカフェインかつ常温のお茶や水を中心に飲むことで膵臓に負担をかけずに済みます。
食事療法にオススメのお弁当
普段、和定食などの料理を作らない人にとって、食事内容をガラリと変える治療法はハードルが高いと思うかもしれません。
そんな時にオススメなのが、ジョイントのお弁当。
管理栄養士が監修して作っているお弁当で、電子レンジで温めるだけで手軽に健康管理が出来ます。魚のメニューや和食のメニューも豊富に扱っています。
食生活に注意して病気の悪化を予防しよう
アミラーゼが高いときは、膵炎といった病気を発症している可能性があるので要注意です。自覚症状がなくとも、食生活が乱れたり、過度の飲酒をしてしまったりすると知らぬ間に症状が悪化するかもしれません。とくに膵炎は一度かかると治せないといわれているので、早いうちから生活習慣を整えましょう。
管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。