2022.03.03
意外と知らない「介護食」の種類。それぞれの特徴と調理ポイントを詳しく解説
介護食の役割とは
介護食は、食べる能力に応じて食材の形や大きさ、やわらかさなどを工夫した食事です。加齢などに伴い、かむ力や飲み込む力が衰えるため、食べやすさにこだわった工夫がされています。介護食は一般的に、医療・介護施設向けに取り入れられていますが、市販で購入できたり、自宅で作ったりすることも可能です。
誤嚥(ごえん)を防ぐ
高齢者は、食べ物を誤って気管に入れてしまう誤嚥に注意が必要です。その原因のほとんどが、食べる能力に見合っていない食事をしていることです。かむ力が衰えているとうまく咀嚼ができず固形物が食道に詰まったり、気管に入ったりする恐れがあります。
介護食の種類と特徴
介護食の種類は、「きざみ食」「ソフト食」「ミキサー食」「ゼリー食」の4つです。それぞれの種類に役割があるので、食べる能力に合わせて食事形態を選びましょう。調理方法には食べやすくするための特徴があるので、詳しく解説します。
きざみ食
食材を細かく刻んだ食事です。刻む大きさは5mm〜2cm程度と幅広く、かむ力が弱い人に最適な食事といえます。刻んであるとはいえ固形物を食べられるので、より通常メニューに近い味や食感を楽しめることがメリットです。その一方で、飲み込む力が弱いと、誤って気管に入ってしまう誤嚥を招いてしまう恐れもあります。
ソフト食
食材をミキサーにかけて、固め直した食事です。歯ぐきや舌でつぶせるほどのやわらかさなので、かむことや飲み込むことが難しい人でも、安心して食べられます。きざみ食とは違い、食材がゲル化によりまとまっているので、食材本来の見た目を楽しめることがメリットです。しかし完成までの工程が多く、調理時間は長くなってしまいます。
ミキサー食
食材をミキサーにかけて、ドロドロの状態にした食事です。すでに飲み込めるような状態にしているので、食材をかむことや飲み込むことが難しい人に向いています。ただ、きざみ食やソフト食に比べて見た目が悪く、食欲を損ないやすいです。また、食材に混ぜる出汁や水分量が多すぎると誤嚥のリスクも高まるため、ほどよい粘度に仕上げる必要があります。
ゼリー食
食材をペースト状にし、固形化補助食品を加えてゲル化した食事です。ゼリーによってあらかじめ食塊が形成されており、口内や食道での滑りもよいので、重度の摂食困難者に向いています。その一方、食材の全てがゼリー状なので、食欲を損ないやすいです。なるべく食材本来の形に近づけるために、型抜きをして見た目を工夫することが大切です。
介護食の区分に沿った選び方
市販の介護食を購入する場合は、食品ごとに定められている区分を参考にしましょう。この区分は、介護食を必要としている人のかむ力や飲み込む力によって、マークで識別されています。あらかじめ区分を確認することで、どのような食事形態に該当するかを把握でき、購入後のミスマッチを防げることがメリットです。
ユニバーサルデザインフード
日常食から介護食まで幅広く展開している、食べる能力に合わせた食品です。商品のパッケージにはユニバーサルデザインフードのマークがついており、下記の表のような区分ごとに食べやすさが記載されているので、食品選びの参考にしましょう。
区分 | 容易にかめる | 歯ぐきでつぶせる | 舌でつぶせる | かまない |
かむ力の目安 | かたいものや大きいものはやや食べづらい | かたいものや大きいものは食べづらい | 細かくてやわらかければ食べられる | 固形物は小さくても食べづらい |
飲み込む力の目安 | 普通に飲み込める | ものによっては飲み込みづらいことがある | 水やお茶が飲み込みづらいことがある | 水やお茶が飲み込みづらい |
出典:日本介護食品協議会 「ユニバーサルデザインフード」選び方(区分表)
ユニバーサルデザインフードは、ドラッグストアやスーパー、通販などで手に入ります。レトルトや冷凍食品、とろみ調整食品として販売されているので、調理に手間がかかりません。
スマイルケア食
介護食を必要とする人の状態に応じ、マークによって区分された食品です。農林水産省によって厳格な基準のもと分類されており、さまざまな食品メーカーが参入しています。区分は「青マーク」「黄マーク」「赤マーク」の3つがあり、色によって選び方の基準が異なるのが特徴です。マークごとの内容は以下の通りです。
青マーク | 黄マーク | 赤マーク |
かむこと・飲み込むことに問題はないが、健康維持上栄養補給を必要とする人向けの食品 | かむことに問題がある人向けの食品
※2〜5の四段階 |
飲み込むことに問題がある人向けの食品
※0〜2の三段階 |
出典:農林水産省 スマイルケア食(新しい介護食品)「スマイルケア食識別マーク」
「赤マーク」はさらに三段階、「黄マーク」は四段階に細分化され、「青マーク」に近づくほど常食よりの食事内容です。ユニバーサルデザインフードと同様に、食品のパッケージにマークが記載されているので、該当する食品を選びましょう。
介護食の調理方法とポイント
介護食は購入する以外にも、調理することが可能です。一般的な食事とは違い、食べやすさに配慮する必要があります。 咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)力によって、使用する材料や調理方法が異なるので注意が必要です。
食事形態に合わせて調理する
介護食を調理する際は、ユニバーサルデザインフードやスマイルケア食の区分を参考にしましょう。食べる能力に応じた食事形態に変えることができ、より安全・安心な介護食を作れます。
固形物を歯ぐきでつぶせる場合
固形物を歯ぐきでつぶせる場合は、「ソフト食」がおすすめです。使う食材は、肉であればスジの少ないひき肉やヒレ肉、魚は身がパサつきにくいホッケやタラなどの「白身魚」がよいでしょう。スジや骨はできるかぎり取り除いておきましょう。野菜は繊維質の少ないブロッコリーやにんじんなどがおすすめです。
材料が全て揃ったら、食材を固めるゲル化剤とともに主菜、副菜を分けてミキサーにかけ、ドロドロの状態にします。フライパンに移して80°くらいまで加熱し、全体的に火が通ったら、型に流し込んで完成です。型はさまざまな種類があるので、食材の形状に対応させましょう。
固形物を舌でつぶせる場合
固形物を舌でつぶせる場合はソフト食でも問題ありませんが、より時短で作るなら「ミキサー食」がおすすめです。食材は脂肪分の多い肉や魚、ほうれん草などの葉物野菜を選びましょう。脂肪の少ない肉や魚をミキサーにかけてしまうと、舌触りが悪くなってしまうので、油(脂)も加えることがポイントです。
完成後の粘度は、スプーンからポタポタと落ちる程度が理想的といえます。液体のようにサラサラしていると、誤嚥の要因となるので注意が必要です。ミキサー食は食材の形がないので、見た目が悪く食欲を損ないやすいため、コンソメやみそなどの調味料を活用しましょう。
そもそも固形物を食べられない場合
かむ力や飲み込む力が弱く、固形物を食べられない人は「ゼリー食」がおすすめです。ゼリー食はかむ必要がなく、食塊ができているので飲み込みやすくなります。調理方法はソフト食と似ており、食材をゼラチンやでんぷんとともにミキサーにかけペースト状にした後、フライパンで80°くらいまで加熱します。全体に火が通ったら、ラップや型でお好みの形に成形し、40℃以下に冷まし20°以下に冷却して完成です。肉や魚をゼリー化してしまうと、食欲を損なう恐れがあるので、表面をバーナーで炙り、少しだけ焦げ目をつけると見た目の印象がよくなります。
食欲を損なわないように注意する
介護食は便利な反面、食材本来の形状や色味、食感などを楽しめないため、食欲を損ないやすいことに注意が必要です。食べやすさを意識することはもちろん重要ですが、見た目や味を工夫することが大切になります。調味料を使って風味や味を出したり、本来の食材の形になるべく近づけたりするなどして、食事が楽しめるようにしていきましょう。
忙しい人向けの対応
介護食は常食とは違い、とろみをつける工程や固める工程が発生するため、調理時間が長くなってしまい、忙しい人には負担になりがちです。そのようなときは、スーパーや薬局、通販で販売されている介護食で対応しましょう。
スーパーや薬局で介護食を購入する
スーパーや薬局では、レトルトの介護食がメインで販売されています。麻婆豆腐や肉じゃが、雑炊など種類が非常に豊富なので、飽き防止にもつながるでしょう。介護食として販売されている食品は、食べやすさに配慮したユニバーサルデザインフードや、スマイルケア食です。介護食のパッケージにかみやすさや飲み込みやすさといった区分が記載されているため、利用者にとって選びやすい工夫がされています。
通販で介護食を購入する
通販では、レトルト食品や冷凍食品の介護食が販売されています。冷凍食品では、出来合いのものがお弁当で冷凍されているので、より常食に近い食事を楽しむことが可能です。魚の煮付けやハンバーグ、ビーフシチューなど種類が多彩であり、介護食だと忘れるほどの完成度です。ジョイントでは、かむ力や飲み込む力が弱い人に向けて、豊富な種類の介護食メニューを取りそろえています。食べやすさだけでなく、「おいしく・ボリューミー」な内容となっているので、興味のある人は活用してみましょう。
高齢者が毎日の食事を楽しめるような工夫
高齢者にとって食は大きな幸せです。介護食の食べやすさを意識するあまり、料理の見た目や味を損なったり、嫌いな食べ物を提供したりすると高齢者にとってストレスになります。場合によっては、摂食しないことによる低栄養状態になり、健康被害にもつながる恐れがあるのです。まずは、高齢者が毎日の介護食を楽しめるような工夫をしましょう。
好きな食べ物を把握する
高齢者が介護食を楽しむためには、好きな食べ物を把握することが大切です。好きな食べ物をそのままの形で食べることは難しいですが、介護食でも味や風味は調理次第で活かせます。
塩分量が高い食事は、血圧を上げる可能性があるなど健康的によくないですが、味が薄すぎて食べることを拒否される可能性もあります。重要なことは、食べ物の栄養素を体に吸収させることなので、極度に味を薄くして食欲を減退させないようにしていきましょう。
心のケアも必要
食の幸せは、環境面にも影響します。毎日1人で介護食を食べているのであれば、誰かと一緒に食卓を囲むことが大切です。食べている場所が毎回同じであれば、雰囲気の違う部屋で食べることで心境の変化があります。高齢者は自分自身の意志を伝えることが苦手な可能性があるため、心の中では孤独感を感じていることがあります。食欲が減退することも往々にしてあるので、こちらから寄り添っていくことが大切です。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。