食事療法
2022.02.22
知っておきたい塩分とカリウムの関係性。豊富に含む食品や摂取時の注意点について
塩分に関する基礎知識
人の身体は塩分がないと成り立たないため、塩味を好むようになっています。まずは、塩分がどのようなものかを紹介します。
塩分とは
食塩を構成している主な成分である、塩化ナトリウムという物質を指します。食品に表示されている食塩相当量に該当するものが、塩分の量です。
人との関係
味覚の基本五味のうち塩味を持つ天然物質は塩分だけで、食品の保存の観点からも古くから大切にされてきました。saltが語源となった言葉には、sauceやsaladなどがあります。また料理に関するものだけでなく、salary(給料)などの日常的な言葉にも組み込まれているのです。これはローマ時代に給料を塩で支給していたことが起源になっており、いかに塩分が貴重な存在だったかわかります。
参考文献:共立出版「マギーキッチンサイエンス―食材から食卓まで― 香西みどり」
塩分の身体の中での働き
塩分は人の体内に吸収されると、ナトリウムとクロール(塩素)という物質に分けられます。体内ではナトリウムによる働きが主で、大きく分けると細胞維持、情報伝達、血圧調整の3つです。
細胞維持
人の身体は、たくさんの細胞からできています。その細胞を取り巻いているのが、細胞外液と呼ばれる液体です。ナトリウムはその中に溶け込んでおり、その濃度によって水分量の調節をしています。細胞外液が多すぎても少なすぎても、細胞の内側と外側の水分のバランスが崩れてしまいます。
情報伝達(神経・筋肉)
ナトリウムには、情報伝達の役割があります。細胞の外側にあるナトリウムが内側の物質と入れ替わると、電流が流れます。それが信号となって神経細胞に興奮を伝え、筋肉を動かすなどの反応が起こるのです。脳波や心電図などの計測は、このナトリウムの反応による電流を捉えることで測定しています。
血圧調節
細胞維持と同じような働きをします。血液は、血球成分とそれ以外の液体である血しょうに分かれています。その血しょう中に含まれるナトリウムの働きによって血管内の水分量をコントロールし、血圧が調節されるのです。高血圧などの生活習慣病と塩分の摂取量に密接な関係があるのは、そのためです。
参考文献:アイ・ケイ・コーポレーション「ヒトの基礎生化学 川上浩」
1日の摂取量はどれくらい?
成人の1日に必要な塩分の摂取量は、1.5gで十分とされています。塩分は尿を作る過程で再吸収されるため、食事で不足することがほとんどありません。高血圧の予防の観点からみると、1日当たり6g以内が望ましいとされています。
出典:日本人の食事摂取基準(2020年版)
必要な量が不足すると
汗を多量にかいたときや下痢やおう吐などのときには、塩分が不足するリスクがあります。不足すると体内の水分量のバランスを保てなくなるため血液の循環が悪くなり、頭痛やけん怠感、低血圧などが起こります。また、情報伝達もうまく働かなくなるため、筋肉のけいれんが起こることもあるのです。
過剰になると
塩分の摂取量が多すぎると血液中の水分も増えるため、高血圧になる可能性があります。また腎臓に負担がかかることから、腎機能に障害が出てくることもあるのです。ほかにも、塩分の摂りすぎによる身体のむくみも考えられるでしょう。
カリウムに関する基礎知識
カリウムはナトリウムと並んで、体内で重要な役割を持つ物質の1つです。塩分による生活習慣病を予防するために、カリウムの摂取量にも気をつけることが大切です。
カリウムとは
ナトリウムと互いに作用し合いながら、体内で働く物質です。食品に含まれるカリウムは小腸から吸収され、細胞内に多く存在します。
ミネラルの1種
カリウムは、1日に必要な量が多いミネラルです。野菜や果物、海藻類などの植物性の食品に多く含まれています。
カリウムの身体の中での働き
カリウムは、身体の中で塩分の3つの働きを別の側面から支えています。
細胞維持
カリウムは、細胞の内側の水分である細胞内液に多く存在します。水分の濃度を保つことによって、細胞の維持に貢献しています。
情報伝達(神経・筋肉)
ナトリウムと入れ替わる内側の物質が、カリウムです。カリウムとナトリウムが入れ替わることにより神経や筋肉へ信号が送られて、さまざまな反応が起こります。
塩分調節
カリウムは塩分が身体の中で増えすぎると、排出するように促す効果があります。この働きにより、血圧を正常に保てるのです。塩分による生活習慣病の予防に効果があるといわれており、積極的に食事に取り入れることが推奨されています。
1日の摂取量はどれくらい?
カリウムの1日の摂取量は、成人男性が2500mg/日、成人女性は2000mg/日が目安とされています。この量を満たしていれば、体内でのカリウム量を保てるのです。あくまで塩分とのバランスなので、生活習慣病の予防の観点からは3500~5000mgが摂取目標として提示されています。
出典:日本人の食事摂取基準(2020年版)
必要な量が不足すると
カリウムは多くの食品に含まれているので、基本的に不足することはありません。ですが、塩分の摂取量が多い場合には、それらを排出するためにより多くのカリウムが必要になります。
超過しすぎると
カリウムを摂りすぎても自然に排出されるため、特に問題ないとされています。ただし、バランスが崩れると塩分の再吸収を阻害することになるため、注意が必要です。
塩分とカリウムを豊富に含む食品
ここからは、実際にどのような食品に塩分とカリウムが多いのかについて詳しく紹介します。
塩分の多い食品
最近は外食だけでなく、レトルト食品や加工品を取り入れる機会が増えています。それらの食品の中で、注意が必要なものを見てみましょう。
汁もの
みそ汁やお澄ましなどの塩分濃度は、大体0.8〜1.0%です。おわん1杯当たりの水分量は160ml前後のため、1杯の汁もので1.3〜1.6gの塩分が含まれている計算になります。麺のスープは濃い目に作られることが多く、塩分濃度は1.5%程度になります。1杯当たりの水分量も300mlほどあるため、全て飲んでしまうと4.5g以上の塩分を摂取することになるのです。(麺の塩分を合わせると約5g)
出典:減塩のコツ早わかり(女子栄養大学出版部)
ファストフード
ハンバーガーは、平均して3〜5g程度の塩分が含まれています。ポテトなどのサイドメニューは2〜3g、ソースをつけるとさらに2〜3g摂取することになります。
出典:マクドナルド「商品栄養成分表示」
出典:ケンタッキーフライドチキン「 KFC商品栄養成分表示」
コンビニフード
コンビニフードの中で注意すべきなのは、ヘルシーなイメージのあるおでんです。おでんの具材にはしっかりと味がしみているため、1つの具材当たりに1gほど塩分が含まれているものもあります。
出典:セブンイレブン「おでん栄養成分表示」
カリウムの多い食品
カリウムは幅広い食品に含まれているため、比較的簡単に日常の食事に取り入れられます。日常的に塩分を多く摂ってしまっている人は、意識的に取り入れるようにしましょう。
動物性食品
動物性の食品の中でカリウムが多く含まれているのは、以下のとおりです。
- 豚や牛の赤身
- ササミなどの淡白な肉類
- タイやサワラ、カジキなどの白身
- 貝類
- 乳製品
植物性食品
比較的多くの植物性食品に含まれていますが、乾物に関しては一度に食べる量を考える必要があります。植物性の食品の中でカリウムが多く含まれているのは、以下のとおりです。
- ホウレンソウやレタス、キャベツなどの葉野菜
- 芋類
- 豆類
- きのこ類
- 海藻類
- 果物
食べる際の注意点
ここからは、食事の際に気をつける点を紹介します。
食品の組み合わせ方
ただ単純に塩分を減らそうとすると、加工品が買えなかったり外食が難しかったりなどで無理をすることになります。カリウムとのバランスを考えて上手に組み合わせることで、負担なく健康な食事に変えられるでしょう。
外食時の対策
塩分が多いからと食べたいものを我慢するのは、負担も大きく長続きしません。外食で塩分を摂りすぎてしまった場合は、前後の食事でカリウムを積極的に取り入れましょう。また、お店を選ぶときや注文の際は、以下のような工夫がおすすめです。
- 野菜を使ったサイドメニューが豊富な店を選ぶ
- カリウムの多いトッピングを追加する
- 麺類の汁を飲み切らない
コンビニ購入時の対策
購入する前に、ホットスナックや弁当などの栄養成分表示を確認しましょう。塩分の多いものを選ぶときには、野菜を使用した副菜やカットフルーツなどを用いて効率的にカリウムも取り入れてください。ただし、千切りキャベツなどの細かく刻まれた野菜は、水にさらされている間にカリウムが減ってしまっています。サラダを選ぶ際は、その点にも気をつけましょう。
上手な間食のとり方
忙しいと満足に食事が摂れず、塩分に対して十分なカリウムが摂れないこともあるでしょう。そういった場合には、上手に間食をとり入れることも大切です。
間食におすすめの食品
手軽に食べられるカリウムが多い食品には、ドライフルーツや干し芋、ナッツなどの乾物があります。水分が含まれていない分、少量でも効率的にカリウムを摂取できます。ただし、ナッツは味つけに塩分を使用しているものがあるため、食塩不使用などの表示がされているものを選んでください。
作る際の注意点
自炊の場合は調理法から調味料まで全て自分で決められるため、外食やコンビニ購入時よりも管理しやすくなります。ここでは、自炊する際の注意点を紹介します。
自炊で減塩する
まずは、効果的に減塩する方法です。
塩分の使い方
塩は食材の表面に軽く振り、メリハリをつけましょう。同じ塩分量でも食材の表面に塩を振ってあるものの方が、中まで均一に味をしみこませてあるものよりも濃く感じます。また、季節ものの野菜は、調味料がなくてもしっかりと味がします。余計な調味料がいらないので、旬の食材を上手に取り入れましょう。
ほかの調味料の活用
塩分を控えると、料理に物足りなさを感じてしまいがちです。そこで取り入れたいのが、以下のような塩分以外の調味料です。これらを用いることで、塩分が少なくても満足感のある料理に仕上げられます。
- うま味があるだし
- 酸味がある酢やかんきつ類
- 辛味や香りがあるスパイス類
ただし、粉末のだしには塩分が含まれているものが多いので、注意しましょう。
自炊でカリウムを効率よく摂る
カリウムは水溶性のミネラルであるため、調理方法によっては減ってしまいます。そこで、調理方法を確認していきましょう。
茹でる
カリウムの損失が多い調理方法です。茹でる前に細かく切ると断面が多くなり、カリウムが溶けだしやすくなります。汁ものなどのカリウムが溶けだした水分ごと食べる料理であれば、無駄なく摂取できます。
蒸す
茹でる調理方法の代わりに活用してほしい調理方法です。蒸し器を使用するのが面倒という人は、電子レンジを活用するのがおすすめです。
その他
カリウムは水に溶けやすい一方、熱には強いです。水にさらすことでもカリウムは減ります。また、生の状態だと量が多くて食べきれない生野菜は加熱すればかさが減るので、野菜を効率的に摂取できます。
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管理栄養士馬塲 耕造
1950年生まれ。国立循環器病研究センター 栄養管理室長、大阪刀根山医療センター 栄養管理室長、関西福祉科学大学 福祉栄養学科 客員教授。現在、優れた知見をもとに当社商品の監修と管理栄養士の指導を行い、お客様の栄養相談も行っている。